「汚染水を海に流すな!」
市民らが首相官邸前で抗議
薄井崇友・フォトジャーナリスト|2023年8月28日5:51PM
「安全」示すデータなし
参議院議員会館に場を替え、会場が満席の中で「政府要請」が行なわれた。谷田部裕子さん(これ海)が「漁業者との約束を守り、海洋汚染につながる海洋放出をやめ、陸上保管案を検討するように」との旨の要請書を内閣総理大臣・東電社長あてに提出。8月31日までに回答を求めた。野党の国会議員も駆けつけあいさつ。市民・有識者らも多数スピーチした。
その一人、福島・いわき市から参加した米山努さんは、トリチウムが体内に取り込まれた場合の〈内部被曝〉のリスクを解説し、「国は危険性の限界値を調べ示すべきだ。国際機関が安全だと言えば『科学的に安全』というがそのデータは出てこない」と訴えた。
弁護士の海渡雄一さんは「汚染水は東電と政府が遮水措置をとらなかったために増えた水。国際法上、危険物質は出してはならないという予防原則がある。処理水にはトリチウム以外の放射性核種も含まれ、薄めても〈生体濃縮〉する恐れがあり、それに対する評価はされていない」と批判した。
内部被曝や食物連鎖による生体濃縮の影響を検証していない政府・東電と、危険だとする市民側の違いが浮き彫りになった。この不安が払拭されなければ当然、買い控えは起こる。風評の原因は政府にあり、これこそ実害だ。
集会のあと織田千代さん(これ海共同代表)は「私のような普通の市民が行動しているのが『これ海』です。普通、約束は守らないとだめでしょう!」と話した。
市民が望んでいるのは当たり前の判断だ。内部被曝や食物連鎖の影響を検証もせず約束を破るのは許されるものではない。たとえ関係閣僚会議で流すと決まっても次はそれを止める闘いだ。
(『週刊金曜日』2023年8月25日号)