日中平和友好条約締結45周年大集会
「台湾有事」煽る風潮を批判
竪場勝司・ライター|2023年8月31日5:44PM
「日中平和友好条約締結45周年記念大集会」が8月10日、東京の衆議院第一議員会館で開かれ、約300人が参加した。記念講演や各界からの発言では、台湾有事を煽る日本国内の風潮を批判し、改めて日本と中国の間の交流の大切さを訴えるものが目立った。
日中平和友好条約は1978年8月12日、日中両国間の恒久的な平和友好関係を発展させるために締結された。集会は「村山首相談話を継承し発展させる会」や「日中労働者交流協会」「かながわ歴史教育を考える市民の会」などで作る実行委員会が主催し、「日中友好こそ、日本の最大の安全保障の一つだ」をテーマに開いた。
主催者を代表してあいさつした「村山首相談話を継承し発展させる会」の藤田高景理事長は、現在の日本政府の姿勢について「米国の言いなりになり、経済安保の名の下に中国への先端技術の規制を始めたが、これは必ず中国の反発を引き起こすやり方であり、日本の国益を阻害する愚かな行動ではないか」と批判。日本の最大の貿易相手国となった中国を仮想敵国に仕立て上げ、沖縄の島々にミサイル基地を建設して緊張を高めることへの疑問を提示し「台湾有事を口実にして反中国包囲網に進むのではなく、正常な善隣友好関係を取り戻さなくてはいけない」と訴えた。
記念講演では元広島平和研究所長の浅井基文さんが「バイデン・岸田対中対決政治は清算しなければならない」の表題で台湾問題を解説。「中国はこれを内政問題と考えているが、米国は国際問題としており、ここに根本的な食い違いがある」としつつ、これまでに出された三つの米中共同声明では米中双方が台湾問題について自国の解釈を維持できる「玉虫色の解決が図られてきた」と指摘。「問題が起こった時には武力干渉できる余地を残すのが米国の方針で、台湾は自らの内政問題と考える中国の立場を理解する、との表明にとどまっている」と語った。
台湾をめぐる日中関係についても「日米関係に縛られない中国と、米国の立場を優先する日本が72年の日中共同声明においても玉虫色の解決を行なった」と説明。台湾問題の火種が三つの米中共同声明と日中共同声明にあると強調したうえで、もし台湾有事が「発火」してしまった場合に日本が壊滅的な被害を受ける可能性にも言及。「平和友好条約を一歩進め、日中不戦の条約を正面切って結ぶ覚悟をしなければならない時代に入っている」と述べ、「岸田政権の親米反中路線は最悪の選択。日本は、アメリカべったりではない、自主独立の外交に転換しなければいけない」と最後に強調した。
「今こそ中国に学ぶべき」
各界からの発言では、元経済産業省官僚の古賀茂明さんが「2027年までに中国が台湾を武力統合しようとしている」との言説を「嘘だ」と断言。だがその前提の下にすべての話が進んでいる今の日本の外交安全保障政策を嘆きながら「台湾を戦場にして武力統合などというのは中国から見れば最悪のシナリオで、それはほとんどあり得ない。日米は今『危ないぞ。戦う準備をしろ』という間違ったメッセージを台湾に送っている」と警鐘を鳴らした。
人材派遣会社「ザ・アール」の創業者、奥谷禮子さんは経済力で中国が日本を抜き、米国も抜こうとしている現状に言及。中国の指導者には国を引っ張っていく戦略や人材面での戦略があったと評価する一方「日本が今一番劣化しているのは人材だ」と憂慮。「中国憎しなどと言っている場合ではない。15億の民を教育し食べさせていくのは並大抵のことではない。中国がこの30~40年間であれだけのレベルの国を作ることができた背景には、4000年の歴史の重さが花開いたところがあったと思う。今一番大事なのは、日本が中国に謙虚に学ぶことだ」と語った。
集会では日中友好の思いを込めて、東方文化芸術団団長の田偉さんの独唱の披露などもあった。
(『週刊金曜日』2023年8月25日号)