川内原発20年運転延長の是非を県民投票で決める署名に5万筆超
薄井崇友・フォトジャーナリスト|2023年9月1日2:04PM
「川内原発20年延長を問う県民投票の会」(以下、同会)のメンバーたちは8月7日、鹿児島市役所で行なわれた記者会見の席で「50,290筆集まりました!」などと描かれた横断幕を掲げ、満面の笑みを浮かべた。
九州電力(九電)川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の20年運転延長の是非を問う「県民投票条例の制定」をめざす同会は、条例制定を求める請求書を5月17日に同県へ提出。6月1日から署名運動を開始した(本誌6月9日号で既報)。その結果、条例制定の本請求に必要な県内有権者の50分の1(2万6475人=8月1日現在)の約2倍の署名が集まったとして、この日に発表。鹿児島市の選挙管理委員会(選管)に該当分署名を提出し、会見した。
同会事務局長の向原祥隆さんは「県民の皆さんの支持を集めたと考えます」と第一声。結果を次のように分析した。
「モノには寿命がある。40年の寿命を迎える川内原発をさらに20年運転するのは危険ではないか? 民主主義・地方自治の基本にのっとり、その是非を県民自身の手で判断しようという趣旨をご理解いただけたのだと思う」
九電は、川内原発1・2号機の運転20年延長を原子力規制委員会に申請した。岸田文雄政権の発足以降、原発回帰へと舵が切られ、老朽原発の活用が進む中、「必要に応じて県民投票をする」と2020年の県知事選挙で公約のうえ当選し、県民投票条例案を発議するべき塩田康一・鹿児島県知事には、その動きがない。そこで「鹿児島の将来を決する問題であり、一番大事なことは県民投票で決めよう」と同会が動き、5万筆超を勝ち取ったのだ。
今後は選管による署名審査などを経て、確定した数を同会が知事に「本請求」する。知事は通例、自身の「賛否を書いた意見書」を添え、条例案を議会へ提出。議会が審議・採決する。知事提案の議案は通常可決するため、知事の意見書の賛否の影響は大きいのだ。
鹿児島県議会は全51議席で、与党(自民・公明)が37議席あり、可決には与党議員の半分程度を賛成へと切り崩さねばならない。知事による議案提出は9月末頃が見込まれており、交渉の期間は残り約1カ月しかない。
県議会での可決へ向けた抱負として、向原さんは「知事との非公式での面会は難しいが、署名提出の時には意見交換し、意見書に賛成意見を添えるよう説得したい」と語る。鹿児島県では来年7月に県知事選挙があり「対応によってはここで(知事の姿勢を)問い直すことになる」ともいう。
ネット動画でPR活動も
県議対策として向原さんは「自民党も福島の事故以降は原発から手を引くと言っていた。岸田政権の原発回帰には違和感を抱く県議もいる。県民の代議員なのだから県民投票には賛成できるはず。必要数の約2倍に及んだ、住民からの声の重さを受け止めるように説得する」と述べた。すでに「賛成する」との書面を交わした県議もいるという。
同会ではユーチューブなどでの発信も実施(※)。また、「塩田康一知事! 鹿児島で民主主義を実践しましょうね!!」などのメッセージが躍るアニメーションなども活用しながら、知事が意見書で賛否を表明するかどうかについての、県民の関心を促している。
同会では「署名収集にかけた私たちそれぞれの具体的な想いを、公式なり非公式なり、それぞれのスタイルでしっかりと届けてまいりましょう」と、自分たちの力での世論形成を図るべく、内部でも声掛けをしている。闘いは残り1カ月。県外からの関心の高まりも後押し材料だ。
※ 「県民投票の会」メンバーによるメッセージ動画は「学カフェ-Kagoshima-」で公開中。https://www.youtube.com/@-kagoshima-8735
(『週刊金曜日』2023年9月1日号)