統一地方選に立候補した20~30代女性の約7割がハラスメント経験あり
竪場勝司・ライター|2023年9月8日2:57PM
今春の統一地方選に立候補した20代、30代の女性の約7割が、立候補を決める段階から選挙期間中にかけて「性別に基づく侮蔑的な態度や発言」を経験していた――そんな調査結果が、8月30日に東京都内で開かれた記者会見で公表された。一方、回答した女性候補者のほとんどが「出馬してよかった」と選挙での経験をポジティブにとらえていることもわかった。
会見を開いたのは、政治分野のジェンダーギャップ解消を目指して2022年8月に発足した団体「FIFTYS PROJECT」(能條桃子代表。以下FP)。同団体は今春の統一地方選挙で政策の一致する29人を支援(そのうち24人が当選)したが、立候補した女性たちが選挙を通じて経験した困難や、それを乗り越えて当選した成功体験を集合知として次の世代に伝えることを目的に「社会調査支援機構チキラボ」(荻上チキ所長)に調査を依頼。地方選後の5月13日に支援対象者向けの「振り返りの会」を開催し、落選者を含む21人が参加した。
ワークショップ形式の「振り返りの会」では、立候補前から選挙終了までにあった「ネガティブ・ポジティブな体験や内面」と「助けられたサポート・不足や不満があったサポート」を、参加者同士がポストイットに自由に書き出しながら共有した。アンケートも実施され、質問項目については内閣府男女共同参画局が実施した「女性の政治参画への障壁等に関する調査研究報告書」を参照した。
アンケート結果によると、立候補の動機については21人の回答者全員が「国政や地方政治に、女性の声を反映させるため」の選択肢を選んだ。同様の質問をした内閣府調査(女性の回答者の61・5%)との比較でも圧倒的に高い割合だった。次に多かったのは「議員や首長となり課題を解決したいという使命感から」。「ロールモデルにあこがれて」がこれに続いた。
立候補を決める段階から選挙期間の間に経験したことを尋ねる質問に対しては、「性別に基づく侮蔑的な態度や発言」が「頻繁にあった」と「たまにあった」を合わせて71・4%、「SNS、メール等による中傷、嫌がらせ」が71・4%、「性的、もしくは暴力的な言葉(ヤジを含む)による嫌がらせ」52・4%などが上位を占めた。これらの数字も内閣府の調査の数字よりかなり高いが、その差についてチキラボでは「調査の対象が若く、多くの候補者がジェンダー問題についての意識が高いことから、ハラスメントを把握しやすいのでは」と分析している。
男性候補者と異なる傾向
自由記述の回答では「選挙や政治活動に初めて関わる人たちが『楽しい』!」「政治が身近に」「演説して成長」「応援、予想外でポジティブなことも!」など、選挙活動を通じて経験した周囲からの好意的な反応について多くの声が挙がっていた。また、FPを通じて「20~30代の女性が集まってくれた」などFPへの好意的なコメントも多かった。これについてはチキラボも「選挙に出馬することは、ときには問題の矢面に立ち、孤立感を経験することもあるところ、同じような『新人女性候補者』という立場での情報交換や言語交換は、相互のメンタルケアという点においても無視し得ない役割があったと考えられる」と分析。FPの取り組みを高く評価した。
会見で能條さんは、内閣府調査では立候補の動機について男性で「地元や政党からの要請」などの回答が多かったことに比べ、FPの支援対象者には「ロールモデルにあこがれて」「マスメディアの情報から」など今までの政治家にはない別の動機付けで立候補している傾向があると分析したうえで「こうした人たちを増やしていくことも大事だ」と指摘。「支援対象者にUターン経験者や移住者の割合が多かったのも特徴で、こうした人たちの声も求められていたと思う」と述べた。
FPでは来春以降に行なわれる自治体議員選挙に向けて2期目の候補者募集(応募は10月末まで)を開始。活動を支える「マンスリーサポーター」も募集中だ(※)。
※FIFTYS PROJECT公式サイト=https://www.fiftysproject.com/
問い合わせはfiftysproject@gmail.comへ。
(『週刊金曜日』2023年9月8日号)