「汚染水を海に流すな!」
ソウルから東京へ大行進で抗議
薄井崇友・フォトジャーナリスト|2023年9月22日5:24PM
東京・永田町の国会議事堂周辺の歩道を9月11日午後、「放射能汚染水を海に流すな!」と書いたプラカードなどを掲げた人たちが堂々と歩いていた。新橋SL広場から議員会館前への行進だ。警官は命令調で「旗や幟を下ろせ」と執拗に繰り返した。警察に申請して行なうデモとは雰囲気が違った。
この行進は、8月に福島で始まってしまった原発汚染水の海洋放出に反対を唱えながら、韓国・ソウルから東京まで約1600キロメートル、86日間の「徒歩行進」をしてきた韓国・元水原大学教授の李元栄さんの最終行動。行進の途中で出会った日韓の同志から託された書簡を、衆議院議長宛てに手渡すのが目的だ。「李さんと共に歩こう!」と脱原発運動を粘り強くつづけている「経産省前テントひろば」が呼びかけた。
李さんは、横断歩道の信号が青になるのを待って参加者と一緒に議員会館前の歩道に並んだ。狭い歩道は多くの参加者で溢れたが、歩行者のために通路を開けなければならない。警官は「通路を開けなさい」と連呼。これに対して李さんは「思ったより多くの人が集まった。ここでは狭い」とマイクを持ちながら議員会館のエントランス前広場を指差し「あそこを開放してください」と要望したが、警官は聞く由もない。
「この狭い通路では皆から託された書簡は渡せない」と李さんは粘り強く訴えた。「公共の場をなぜ市民に使わせないのか。警察はこの国の主権者・国民に礼儀を尽くさねばなりません」。韓国民衆運動の厚みと胆力のある姿だった。
激励に来ていた大椿ゆうこ参議院議員(社民党)の配慮で使えることになった同議員事務所の一室で、李さんら7人が衆議院事務局議事部請願課担当に陳情書と書簡3冊を提出したが、宛て主である細田博之衆議院議長の姿はその場にはなかったという。陳情書では「原発汚染水を海や川に放出しないとの方針決定をしたアメリカでの事例」などを挙げながら「国会での徹底審査」を求め、「人類初のデブリに触れた水の海洋放流を中止すべきだ」と強調した。
「テントひろば」12周年!
くしくも同日は経産省前テントひろばが開設12周年記念の大集会を、近くの経済産業省前の歩道で開催。福島原発事故があった2011年の9月11日、同省敷地の一角に有志がテント設営のうえ運動の拠点としたのが始まりだ。集会では陳情を終えた李さん、福島在住の方々、河合弘之弁護士、ルポライターの鎌田慧さん、福島みずほ社民党党首などがマイクを握った。
目下の焦点は原発汚染水問題だ。河合弁護士は「漁業関係者が勇気をもって原告になってくれた」と、8日の福島地裁での放出差し止め求め提訴の件を報告したうえで、「汚染水を止める闘いは正義の闘いだ。もっと多くの原告の人たちと止めるまで闘う。一緒に取り組みましょう」と呼びかけた。
(『週刊金曜日』2023年9月22日号)