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23年度「JCJ大賞」は鈴木エイト氏の統一教会報道 
政治と宗教の癒着指摘

古川英一・JCJ事務局長|2023年10月6日6:36PM

「いつか世に問うために、報われない努力を続けてきました。安倍(晋三)元首相の銃撃事件で統一教会の問題が明るみに出て以来、調べたデータを惜しみなく公開してきたのは、自分一人でこの問題を負いきれないからです。オープンソースとして活用してもらうことで健全なジャーナリズムが復権できたのではないかと思います」

小山美砂さん(左から2人目)ほかの受賞者と一緒に記念撮影に臨んだ鈴木エイトさん(中央)さん。(撮影/古川英一)

 会場のスクリーンにはジャーナリスト、鈴木エイトさんの淡々とした語り口ながらも力強いビデオメッセージが映し出された。

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)が優れたジャーナリストを顕彰するJCJ賞の第66回の贈賞式が、9月23日に東京で開かれた。2023年度の「JCJ大賞」に選ばれたのは鈴木さんの『自民党の統一教会汚染』シリーズ2作品(「追跡3000日」「山上徹也からの伝言」。ともに小学館)。選考委員の鈴木耕さんは「20年間にわたり、たった一人で巨大な集団と向き合うことの大変さ、そして取材の成果を囲い込むのではなくマスメディアへ提供するなど、まさにジャーナリズム活動の一つの手本を示すもの」と講評した。

 鈴木エイトさんはメッセージで「安倍元首相は統一教会の大会にビデオメッセージを送ったが、本人は自分の政治生命は大丈夫だとタカを括っていたのだろう。そこに宗教2世は衝撃を受けた。また、山上被告が私の記事を読んでいたことを後になって知り、私が記事を書いた責任もある」と述べた。安倍氏が平気で映像を送ったのはメディアと政治家との緊張関係がなくなり監視が利かない中、政治と宗教の癒着があったからではと指摘し、自主規制が進むメディアの在り方にも疑問を提示。さらに「これまで怪文書や嫌がらせなどさまざまな攻撃を受けてきたが、20年以上前、最初にこの問題に関わった時から私は変わっていない。社会の中にはまだ可視化されていないことがあり、そうした被害者にスポットを当てていきたいと思う」とメッセージを結んだ。

JCJ賞の持つ意味とは

 今年度のJCJ賞には新聞、出版、放送などから計207点の応募・推薦があり、この中から「JCJ大賞」(前記)、そして「JCJ賞」として以下の5作品が選ばれた。

・「台湾有事」の内実や南西諸島の防衛強化を問う一連の報道(琉球新報社)

・『「黒い雨」訴訟』(小山美砂著 集英社新書)

・「命ぬ水~映し出された沖縄の50年~」(琉球朝日放送)

・「ルポ死亡退院~精神医療・闇の実態~」(NHK Eテレ「ETV特集」)

・「市民と核兵器~ウクライナ 危機の中の対話~」(同前)

 このうち『「黒い雨」訴訟』で受賞したジャーナリストの小山さんはもともと『毎日新聞』記者として19年秋から被爆者の「黒い雨」訴訟を軸に、これまで埋もれていた問題、被爆者の線引きなどを同作で丹念に掘り起こしており、その射程が「3・11」後の福島第一原発事故の問題にも繋がっている。

 後に毎日新聞社を辞め、今は広島に移り住んで被爆者の問題と向き合い続けている小山さんは大阪弁で「賞をいただき、私はこの道を進んでいいんやと思いました」と破顔一笑し、「黒い雨の問題についてはこれまでまとまった文献がなく、誰かが書かなくてはと思い書きました。被爆者の人たちと一緒に歩いていきたくて、やはりこの取材がしたくて新聞社を退社しました。フリーになってからは自分を何と呼んでいいのか迷ったけれども、今日からは私もジャーナリストと名乗っていきたい」と喜びを語った。

 小山さんによるこのスピーチはJCJ賞という賞が、逆に受賞者からいただいた最高の励ましの言葉でもある。現場で多くの人の声を聞き、問題を明らかにしながら世の中に問うていく。そのようなジャーナリストたちを勇気づけ、少しでも平和な社会を築いていくため共に歩いていくことができるなら、それこそがまさにJCJ賞の望むべき姿だからだ。

(『週刊金曜日』2023年10月6日号)

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