妖怪が支配する国
田中優子|2023年10月6日1:17PM
「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」は、10月22日13時半から専修大学神田キャンパスでシンポジウムを開催する。
基調講演は古賀茂明さんで、「平和主義を捨てた日本」というテーマで話してくださる。その後、望月衣塑子さんと弁護士の杉浦ひとみさんの司会で、私と、漫画家の東村アキコさんと、日本女医会会長の前田佳子さんと、古賀さんにも加わっていただいてパネルディスカッションを展開する。
古賀さんは、世界が「日本人は変わった」と見ていることに注目している。戦争を放棄したはずの日本人が軍事費を増やし、戦争準備をしているからだ。日米安保は日本を守るはずだが、今や日本が米国の「立場」を守るために税金を使い、血を流すかもしれない。この事態に対してどう行動するか。当日の講演とディスカッションはそういうテーマになるだろう。
私は、日本は変わったわけではない、と見ている。戦後ずっと米国に支配され、今も同じだからだ。マッカーサー占領下で行なわれた改革と新憲法制定が新しい日本を作り、武装解除した。しかしその直後、朝鮮戦争下で行なわれた経済的自立による再軍備化という米国の日本についての方針転換もまた、日本を支配した。この非軍事化と再軍事化という両方で米国に従属し、日本はその矛盾を丸ごと抱えて生きてきた。
そして岸信介が統一教会および国際勝共連合とともに作り上げた憲法改正と再軍備化という目標が、今や日本の政治の流れになっている。2012年から、古賀さんの言う「妖怪の孫」が政権を握ったことで、「妖怪」は日本を支配し、米国はその妖怪を利用し尽くしている。それでも警察予備隊発足から65年間は「自衛」という枠を踏み外さなかったが15年にとうとう集団的自衛権行使を容認し、あとは雪崩を打つように「再軍備」に突っ走っている。
古賀さんが「報道ステーション」を降板させられたのは、その15年だった。安倍晋三首相(当時)がジャーナリストの後藤健二さんを犠牲にして米国とともに「戦う」姿勢を明確にしたことに、古賀さんは心底怒った。この時、マスメディアは政権の太鼓持ちに成り下がった。この状況は今も変わらない。この時古賀さんとともに「I am not ABE」と多くの日本人が声を上げて立ち上がったら、その年のいわゆる「新安保法制」の成立はなかったかもしれないのだ。
(『週刊金曜日』2023年10月6日号)