「官製ワーキングプア」
非正規公務員が直面する苦境とは
竪場勝司・ライター|2023年10月27日6:51PM
「なくそう!官製ワーキングプア 反貧困集会2023」が10月15日、東京都中央区内で開かれた。全国の地方自治体で働く非正規の公務員を対象にしたアンケート結果の報告、理不尽な雇い止めにあった図書館司書の訴えなどがあり、非正規公務員の雇用を不安定なものにしている「会計年度任用職員制度」に対する批判が相次いだ。
集会は「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」や「NPO法人官製ワーキングプア研究会」、関係する各地の労働組合などでつくる実行委員会が主催し、80人が参加した。
地方自治体の非正規公務員に対しては、2020年4月から会計年度任用職員制度が導入された。全国の会計年度任用職員は約62万人にのぼる。22年度末の今年3月は、制度導入から丸3年にあたり、総務省が制度の事務処理マニュアルで国の期間業務職員について「再任用は原則2回まで」と例示したことから、3年経過による雇い止め、公募を実施する自治体が多数出ることが予想された。はむねっとでは「3年公募問題」として、大量雇い止めを食い止める活動に取り組んできた。
集会は「3年公募で自治体はどうなった!? 公務職場から不安定雇用をなくそう」をテーマに掲げ、冒頭で、はむねっと共同代表の瀬山紀子さんが地方自治体の会計年度任用職員を対象に実施したアンケート結果について報告した。
アンケートは今年5月から6月にかけてインターネットを使って実施。全国47都道府県から514件の有効回答があり、回答者の約9割が女性だった。
「『予算がつかず、来年度、貴方の席がなくなった』と雇用を打ち切られた」「業務をしっかりと行なってきた人が公募試験で何人も落とされてしまった」「はっきりとした明確かつ合理的な理由が示されないまま雇い止めになるのが実態」などの具体的回答が寄せられ、22年度末に理不尽な雇い止めが発生した実態が明らかになった。
育休中に雇い止めにあった女性は「私は会計年度任用職員になって2回産休・育休を取得しました。再度の任用の際は育休を取得して復職できましたが、公募の年である今回は育休中の3月に雇い止めとなりました」と回答している。
職員に採用された時に雇用更新に関する説明があったかどうかの質問には4割を超える人が「説明がなかった」と回答、「3年目の終わり間際になって再度応募しなければ自然解雇になることを知りました」という声が寄せられた。
「会計年度任用」への批判
瀬山さんは「会計年度任用職員という1年ごとの不安定任用を、国が法制度化していることを許してはいけない。会計年度任用職員制度の根本的見直しに向けて運動を進めていきたい」と強調した。
集会では、埼玉県狭山市立図書館で22年間、司書として働き、会計年度任用職員の3年目の公募を理由に今年3月、雇い止めされた女性が実態を訴えた。女性によると、図書館には会計年度任用職員が37人おり、全員が今回公募のふるいにかけられた。1次選考は狭山市当局が東京の民間会社に丸投げし、書類だけの審査で落とされ、女性を含め11人が雇い止めになったという。11人の中には女性を含めフルタイムの司書として15年以上勤務してきた人が3人含まれていた。
女性が雇い止めの通知を受け取ったのは昨年12月初め。それから4カ月間、仕事は山積みで「継続して次年度以降も雇い続けられる人と、クビになることがわかっている人がずっと同じ職場で働かなければいけないのは非常につらかった」と振り返った。4月に図書館職員の大幅な異動があったが、残っている正職員で司書の有資格者は1人だけ。女性は「図書館としてのサービスが低下している」と指摘する。「知る権利を保障していく社会教育機関なのに専門職が正職員にほとんどおらず、正職員以外は1年ごとに勝手に切られてしまう。司書の専門性を台無しにすれば結局は市民が不利益を被る。本当に怒りを感じている」と訴え、憤りを露わにしていた。
(『週刊金曜日』2023年10月27日号)