「解散命令請求」のタイミングで鈴木エイト氏が統一教会側から訴えられる
メディアでの発言規制狙ったスラップ訴訟か
本田雅和・編集部|2023年11月2日12:20PM
統一教会に解散命令を求める請求が10月13日、政府から東京地裁に出された。請求では不法行為による献金誘導などを指摘しているが、教団側は「偏った情報に基づく決断」などと反発。
こうした動きの中、「統一教会問題」を20年以上にわたって追い続け、手堅い取材で知られるジャーナリストの鈴木エイト氏(55歳)が、教団側(1信者と教団の関連団体)から初めて、名誉毀損で損害賠償を求められる二つの訴訟を相次いで起こされた。
教団の解散を求める政府の姿勢が固まり、世論が高まるにつれ、教団に批判的な発言をした識者や弁護士、ジャーナリスト、番組を報道したテレビ局などが次々と訴えられている。エイト氏は「私への訴訟は、どちらも1100万円という高額な賠償請求額だ。額から判断してもメディアでの発言の自主規制を狙ったスラップ(脅し)訴訟に間違いないが、訴状をざっと見る限り、負ける要素は全くない。理論武装して徹底的に闘う」と語った。
信者で原告となったのは、東京都内在住の現役信者、後藤徹氏(59歳)。10月4日、東京地裁に訴状を提出後、記者会見した。
後藤氏によると、同氏が「脱会屋」と呼ぶ活動家やキリスト教牧師、家族・親族から1995年9月~2008年2月、12年5カ月にわたってマンションの一室に監禁され、「脱会強要」を受けたが、「信仰を捨てることなく、解放された」。その後、活動家や牧師、家族らを被告とする損害賠償請求訴訟を起こし、2014年に東京地裁で拉致監禁などの事実が認定され、2200万円の損害賠償請求が認容され、最高裁で確定した。
そんな後藤氏が今回、エイト氏を被告にしたのは、エイト氏が主筆を務める新聞のニュースサイトや民放テレビ番組などで、後藤氏のことを「引きこもり」と呼んで「愚弄し、名誉(社会的評価)を著しく毀損する発言を繰り返し」たからだという。
記者会見・提訴報告会の中で、後藤氏の代理人弁護士は「教団の解散命令請求とこの名誉毀損裁判は別々」と強調し、教団の意向でエイト氏を訴えたわけではないとの説明をしていた。が、一方で「裁判一般のあり方からすると、その影響はあり得る」として、この時期に間に合わせるべく「提訴を急いだ経緯もある」とした。
「トランプ氏に1億円」
また4日には、教団の関連団体「天宙平和連合(UPF)」日本支部も、エイト氏による安倍晋三元首相に関する発言で「名誉を傷つけられた」として提訴した。
21年のUPFの国際会議に安倍氏がビデオメッセージを送ったことに関連して、エイト氏がX(旧ツイッター)で今年7月に「トランプ前大統領に1億、安倍晋三前首相(当時)に5千万との内部情報」と書き込んだ。UPFは「トランプ氏に約1億円払ったのは事実だが、安倍氏や関連団体には支払っていない」と主張している。
エイト氏を訴えた名誉毀損裁判と教団そのものとの関係でいえば、原告の後藤氏は任意団体「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」の代表を務めているが、後藤氏は、この団体の活動について尋ねた筆者らの質問に「教団の業務委託である」こと、「報酬を受け取っている」ことを明らかにした。
原告と代理人の徳永信一弁護士らは提訴記者会見を司法記者クラブで4日の午前に開催。さらに午後には都内の貸会議室で一般市民も含めて誰でも参加できる形で、提訴報告会も兼ねた会見を開いている。午後の集会には多くの教団信者も参加していたが、入り口で受付業務を担当し、参加した筆者に名刺を求めたのは統一教会(家庭連合)の広報局員だった。
(『週刊金曜日』2023年10月20日号)