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大阪府カジノ問題、新たな事業者優遇疑惑が浮上

平野次郎・フリーライター|2023年11月6日8:30PM

 大阪市の人工島・夢洲でのカジノを中心とする統合型リゾート(IR)計画で、大阪府は9月28日、事業者の大阪IR(株)(オリックスと日本MGMリゾーツなど出資)とIR実施協定を締結した。

カジノ計画の問題点を質す「府民公聴会」には約500人が参加。(撮影/平野次郎)

 この協定には、事業者が軟弱地盤対策や資金調達などの事業前提条件が整っていないと判断すれば協定を解除できる解除権が盛り込まれた。府と市、大阪IRがすでに結んだ基本協定では今年9月までだった解除期限は2026年9月まで3年延長。IR計画では土地対策費約788億円などの公費負担や用地の安い賃料が事業者優遇だとして訴訟(3月3日号既報)中だが、こうした優遇疑惑が未解明のまま協定が締結されただけでなく、公費の投入で土地を整備した後も事業者の都合で撤退できる新たな優遇疑惑が浮上した。

 実施協定などによると、開業時期は30年秋ごろに1年ずれ込み、事業者の初期投資も約1兆800億円から約1兆2700億円に増える見込み。今年秋ごろから液状化対策工事を始め、24年夏ごろから水道や電気などのインフラ工事に着手する想定になっている。

 事業前提条件として、地盤沈下や液状化、土壌汚染などが生じる恐れがないこと、公共インフラ整備などによる制限が投資リターンに著しい影響を与える恐れがないことなどを挙げているほか、不可抗力などにより事業を復旧・継続させることが不可能な場合は違約金を負うことなく協定解除できると規定している。

 こうした動きに対し、カジノに反対する市民団体は署名運動や街頭宣伝・デモ、集会などの抗議行動を展開。「夢洲カジノを止める大阪府民の会」は10月8日に「府民公聴会」を大阪市内で開催。同会の山川義保事務局長は「解除権が規定された実施協定などありえない。協定を認可した国も責任を問われる。追い込まれているのは国と維新の府市政だ」と強調した。

(『週刊金曜日』2023年11月3日号)

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