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タクシー労組らが「ライドシェア」導入に反対集会 
「労働環境悪化する!」

金本裕司・ジャーナリスト|2023年11月10日5:50AM

 一般ドライバーが自家用車を使い有償で客を運ぶ「ライドシェア」について、岸田文雄首相が10月23日、臨時国会の所信表明演説で積極的に取り組む考えを表明。にわかに政治テーマに浮上してきた。同24日には東京・永田町の衆議院第一議員会館で、導入に反対する市民団体やタクシー関係労組、国会議員らが集会を開き、「運賃競争が激しくなり、タクシー運転手の労働環境が悪化する」「性犯罪のおそれなど乗客の安全に懸念がある」などの声が相次いだ。

10月24日、タクシー労組らが国会内で開いた「ライドシェア」反対の院内集会。(撮影/金本裕司)

 新型コロナの影響でタクシー需要が落ち込み、運転手の離職が相次いだ。今年3月末現在、タクシー会社で働く運転手は約23万人。2019年から約2割減少している。一方、ここにきて来日外国人が急増し、京都など観光地ではタクシー不足が指摘されている。

 この状況を受け今年8月、菅義偉前首相が講演で「ライドシェア導入に向けた議論も必要」と表明。河野太郎・デジタル行財政改革担当相や岸田首相が呼応した。

 本来、道路運送法では自家用車で客を運ぶことは「白タク」行為として原則禁止されている。一部、バスやタクシーがない過疎地では、市町村やNPOが主体になり有償で運送できる「自家用有償旅客運送」もある。

 労組や野党議員が反対しているのは、プラットフォーム企業がアプリで客とドライバーを仲介する事業で、米国のウーバーやリフト、中国の滴滴出行などがある。政府がどういう方式を目指すかはこれからの議論だ。

「性犯罪多発」の恐れも

 24日の反対集会は弁護士や研究者、労組などで作る「交通の安全と労働を考える市民会議」が主催。冒頭、事務局の山口広弁護士が「ライドシェアは一見合理性があるように見えるが、米国ではタクシー業界の大混乱と交通渋滞を引き起こした。『雇用』によらない働き方がタクシー業界に導入された」と指摘。さらに長年、自身が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題に取り組んできたことにも触れ「この問題も与野党の枠を超え交通の安全と労働のあり方をオープンに議論したい」と語った。

 続いて国際運輸労連(ITF)の浦田誠政策部長が各国の状況や問題点について解説した。ライドシェアのドライバーは「個人事業主として扱われ、最低賃金や年金などが保障されない。燃料費などもすべて自己負担」で「収入も良いのは最初だけ。途中からプラットフォーム企業にどんどん減らされる」と説明。「ニューヨークでは16年、85%の運転手の手取りが最低賃金以下」「米ウーバーのドライバーの勤続は平均18カ月」と強調した。

OECD加盟国(38カ国)のうちライドシェアを禁止している30カ国

 集会に参加した立憲民主党の辻元清美参議院議員は「世界中でライドシェアをやっているような報道が多いが、先進国38カ国のうち、30カ国が禁止している」と紹介。さらに米ウーバー自身が「セーフティーレポート」で性犯罪が多発していることを公表しているとし、安全性への懸念を表明した。さらにロサンゼルスの日本総領事館がライドシェアについて「ドライバーを装い客を乗せ、非正規の値段を請求したり、強盗、強かんを行なうなどの事件が発生している」と旅行者に注意喚起していることをあげ「外務省がこう指摘しているものを日本に導入するというのは考えられない」と強調した。

(『週刊金曜日』2023年11月10日号)

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