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「元外国籍」理由でゴルフクラブ入会拒否は人種差別 
名古屋高裁で原告逆転勝訴

黄澈・ジャーナリスト|2023年11月10日6:03AM

 ゴルフクラブが「元外国籍」の出自を理由に入会を拒否することの違法性が争われた訴訟の控訴審判決が10月27日、名古屋高裁であった。片田信宏裁判長は「入会拒否は人種差別に当たる」として、一審・津地裁四日市支部の判決を変更し、クラブ側に慰謝料など77万円を支払うよう命じた。

元韓国籍の男性が入会を拒まれた「愛岐カントリークラブ」。(撮影/黄澈)

 訴えていたのは、三重県桑名市で会社を経営する40代の男性。韓国にルーツを持つ父母のもと、在日3世として生まれたが、2018年に日本国籍を取得。昨年2月に岐阜県可児市の「愛岐カントリークラブ」に入会を申請したが、「元韓国籍」を理由に拒否された。男性はその後、精神的苦痛を被ったとして、330万円の損害賠償を求めて提訴。

 しかし、今年4月の一審判決は「クラブは閉鎖的かつ私的な団体」であり、会員の選択はクラブの裁量に委ねられるとして、男性の請求を棄却した(今年4月28日号で既報)。

 これに対し、この日の高裁判決は、クラブについて、会員数が1500人に及び、全国規模の大会も開催されたことなどからすれば「一定の社会性を持った団体」に当たると指摘。会員選択の裁量には社会的に許容しうる限度があり、それを超えた場合には違法と評価されるとの見解を提示した。

 そのうえで、判決は、男性を入会させた場合のクラブ側の不利益と、入会拒否によって男性が被った不利益を比較衡量。

 クラブ側については「設立当初の雰囲気が変わってくる」ことを理由に外国籍の会員を制限した理事会の申し合わせによって、日本で生まれ育ち日本国籍も取得した男性の入会を拒否したことは「合理的な理由があるとは言い難く」、男性の入会を認めても、クラブの結社の自由が制約される不利益の程度は比較的小さいと指摘した。

「理不尽な差別なくなるきっかけに」

 一方、男性にとって、入会拒否は、ゴルフのプレーができない不利益だけでなく、男性が在日韓国人として様々な差別的扱いを受けながら生活してきた境遇などを踏まえれば「人格権や人格的価値」に対する侵害とも言え、「法の下の平等」を定めた憲法14条に反し、人種差別撤廃条約が規定する「人種差別」に当たると指摘。

 その上で判決は、こうした状況は、民法2条が「個人の尊厳と両性の本質的平等」を旨とした法解釈を求めていることを踏まえれば、私人間における不法行為の有無においても考慮されるべきだとして、入会拒否は「構成員選択に当たっての裁量権を逸脱した社会的に許容し得る限度を超えた違法なもの」と結論づけた。

 判決について男性は「ゴルフに限らず、外国にルーツを持つ者への理不尽な差別がなくなるきっかけになれば」と話した。

 控訴審では、早稲田大学の愛敬浩二教授(憲法学)が、原告側の立場から、一審判決の問題点を指摘する意見書を提出していた。高裁判決について、愛敬教授は「適切な判決」と評価した。

 一審判決について、愛敬教授は「憲法上の権利は私人間には適用されないという極端に形式的な『私人間効力論』を前提にして、被告のゴルフクラブを閉鎖的で私的な団体と認定し、会員選定に関する野放図な自由を認めてしまったため、男性が訴えた人格権侵害が具体的に検討される余地はなかった」と指摘した。

 一方、控訴審判決は、クラブが多数の会員を抱え、昨年1年間でさらに200人の新規会員を募集した事実などから「一定の社会性をもった団体」と認定。愛敬教授は「入会拒否をめぐる男性とゴルフクラブ側の双方の利益、不利益を丁寧に検討し、傷ついた男性の心情にも寄り添った」と評価した。

 愛敬教授は「判決は、個人の尊厳の保護をうたう民法2条に基づいて、損害賠償の可否を考える枠組みを明確に打ち出した。憲法14条や人権条約を判断の際の考慮事項としつつ、事案の個別事情に即した比較衡量をきちんと実践することの大切さを示したもので、評価できる」と話した。

(『週刊金曜日』2023年11月10日号)

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