日本・イギリス・イタリアによる次期戦闘機の共同開発の中止を求め、開発を担当する３カ国の軍事企業を回り抗議する「『死の商人』めぐり」が10月25日に東京都内で行なわれた。約40人が参加し、「戦争犯罪に加担するな！」「子どもたちを殺すな！」の訴えが都心のビル街に響いた。

　岸田文雄政権は国会での論議を経ず自民・公明の計12人の議員での実務者協議のみで、これまでできなかった殺傷能力のある武器の輸出を年内にも解禁しようとしているが、その大きな柱が３カ国で共同開発する次期戦闘機を第三国に輸出するための制約を取り除くことだ。

　この次期戦闘機はイギリス・イタリアなどが共同開発した戦闘機「ユーロファイター」の後継機と位置づけられている。ユーロファイターは72機がサウジアラビアに輸出され、同国がイエメン内戦に軍事介入した際の無差別爆撃に使われた。病院や学校にもミサイルが撃ち込まれ、バスに乗っていた40人の子どもが虐殺される事件も起きている。

「『死の商人』めぐり」は複数の反戦・平和団体による「ＳＴＯＰ大軍拡アクション」が主催した。最初の抗議行動の相手先はイギリスの大手軍事企業「ＢＡＥシステムズ」。港区にある同社の日本子会社が入るビル前の歩道に「戦闘機の共同開発を許さない」「死の商人国家に堕落するな！」などの横断幕やプラカードを掲げた参加者が並び、中には「死の商人」を思わせる衣装を身に着けた人も。

　主催者の武器取引反対ネットワーク（ＮＡＪＡＴ）代表の杉原浩司さんは、ユーロファイターがイエメンで引き起こした惨事に触れたうえで「これから開発される戦闘機もサウジアラビアなどに輸出され、民間人の殺傷、虐殺に使われることは明らかだ」と指摘。メイド・イン・ジャパンの武器による戦争犯罪を防ぐための方法は完成する前に共同開発自体を中止に追い込むことだとして、同社に「一日も早くこの戦争犯罪につながるプロジェクトから撤退を」と強い口調で訴えた。

国内軍事最大手にも抗議

　続いて参加者のリレートークが行なわれ「岸田政権下でどんどん『戦争ができる国』に変わろうとしている。日本には戦争をしてはいけないと定めた憲法がある。戦争で儲けようとすることには絶対反対だ」「今のパレスチナの紛争を見れば武力で平和が作れないことははっきりしている。軍事企業が私たちの税金を使って人殺しの兵器を造るなど、もってのほかだ」などの発言があった。さらに参加者たちは「子どもたちを殺すな」「戦闘機の共同開発をやめろ」「戦闘機なんかいらない」「税金を戦闘機開発に使わせないぞ」「殺傷武器の輸出反対」「ＢＡＥは戦闘機開発から撤退しろ」といったシュプレヒコールを繰り返した。

　２番目の抗議先はイタリアの大手軍事企業「レオナルド」。霞が関のビルにある日本支社に向けて参加者たちが発言やシュプレヒコールを行なった。なお主催者はＢＡＥシステムズとレオナルドの双方に対して要請書を受け取るよう求めたが、両社はそれを拒否した。

　最後に参加者たちは皇居に近い三菱重工業の本社前でも抗議行動。主催者からは「三菱重工は日本の軍事産業では最大手」と前置きのうえ、昨年末の安保３文書の決定により敵基地攻撃能力（反撃能力）保有を前提にした長距離ミサイルの開発が始まったことに関して、「三菱重工は４種類以上の長距離ミサイルの開発を手がけている。次期戦闘機の共同開発についても同社は中心企業として引き受けている」と、その場で説明があった。

　杉原さんは参加者を代表して、「三菱重工は憲法違反の敵基地攻撃ミサイルの開発・製造を一手に引き受け、巨額の利益を上げようとしている。戦争犯罪への加担の道にのめり込むのではなく、軍事への傾斜を見直すべきだ。私たちは三菱重工が次期戦闘機の日英伊共同開発から撤退することを強く要求する」との、同社の泉澤清次社長あての要請書を、対応した同社の守衛に手渡した。

（『週刊金曜日』2023年11月10日号）