「沖縄を再び戦場にするな!」
大軍拡に抗い今こそ「命どぅ宝」の精神を
土岐直彦・ジャーナリスト。|2023年11月14日5:22PM
軍事化が急速に進みつつある南西諸島。沖縄県では2月以降、反対集会が続けられ、11月23日には那覇で1万人規模の県民平和大集会を予定。それに先駆けて9月のキックオフ集会の模様を中心に報告する。
2月と5月に「島々を戦場にするな! 沖縄を平和発信の場に!」と題して集会を開いたのは、「再びの沖縄戦に反対する全県組織設立準備委員会」。大軍拡の動きに強い危機感を抱き、沖縄戦再来の悪夢を何としても阻止しようと、今年初めから運動の組織化を進めながら、対話による問題解決の重要性を呼びかけてきた。
「命どぅ宝」とは「命より大切なものはない」の意味。軍備で命は守れない、軍隊は住民を守らない。県民に深く刻まれた戦争の教訓として今でも沖縄の平和思想の原点だ。同会にも「二度と沖縄を戦場にしない」が戦没者や先祖との最低限の約束事だとの思いがある。しかしその眼前に「新しい戦前」が立ち現れてきた。
9月24日には全県組織の「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」(以下、県民の会)の設立・キックオフ集会が沖縄市で開かれた。県内約70の団体と個人からなる同会だが、この日は各団体に動員を呼びかけなかったにもかかわらず若者や子ども連れの母親、お年寄りなど幅広い層から約800人(主催者発表)が参加した。
県民の会の瑞慶覧長敏共同代表は「『絶対に戦争をさせない』の一点で団体、個人が自らの意思で集っている。政府は軍備を増強、ミサイルをどんどん配備しているが、そうすれば相手はもっと軍備強化する。全国、世界と連帯して声を上げ、平和を発信していこう」と呼びかけた。その後、軍事化が進む石垣、宮古島、うるま、沖縄の4市の市民団体代表や自治体議員らが各地の状況を報告。国際協力団体の顧問が、「アメリカによって『作られる』戦争を止めよう」と題した記念講演をした。
南西諸島にミサイル網
南西諸島では中国を事実上の仮想敵国とした自衛隊によるミサイル網が急速に構築されつつある。ミサイル部隊は2019年の奄美大島と宮古島に続き、今年3月には石垣島で開設。年度内には沖縄本島にも開設が予定されている。台湾が約110キロ西に位置する与那国島への配備も決まったが、16年に沿岸監視隊がいち早く配備された同島でも、ミサイル部隊は島民には寝耳に水。当時の与那国町長は「こんなことになるのなら、誘致はしていない」と悔やむ。
こうした一連の「南西シフト」を強行する岸田文雄政権は敵基地攻撃能力(反撃能力)保有に踏み切り、防衛費を27年度にはGDP(国内総生産)比の2%に増やす計画だ。これにより日本は米中に次ぐ世界3位の軍事大国へと躍り出る。専守防衛の国是を投げ捨てる大軍拡路線が国会審議と国民的議論を無視して決められた。
南西シフトが公式に提起されたのは10年のことだ。自衛隊全体の配備が旧ソ連を仮想敵国にした北方シフトから、冷戦終結により「南西防衛」へと転換した。沖縄本島でも近年、陸海空の自衛隊配備の増強が著しい。うるま市へのミサイル部隊の配備のほか、陸上自衛隊第15旅団(約2500人)を26年度をめどに師団化する計画も安保3文書には盛り込まれた。航空自衛隊は南西航空混成団を17年に南西航空方面隊へとすでに格上げし、F15戦闘機部隊を2個飛行隊に倍増した。
敵基地攻撃を担う新型ミサイルも南西諸島へ相次ぎ配備する方向だ。現有の「12式地対艦誘導弾」(奄美・宮古島・石垣の各駐屯地に配備)の射程を200キロから1000キロ超に伸ばした能力向上型を今年度から量産開始し、26年度には部隊配備する。極超音速で飛翔し迎撃が難しい「島嶼防衛用高速滑空弾」の開発も進めている。