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オスプレイ屋久島沖墜落 
米軍に舐められ続ける日本政府

布施祐仁・ジャーナリスト|2023年12月8日2:49PM

 日本国内なのに、なぜ日本政府は米軍機の飛行を停止させることができないのか――。11月29日に鹿児島県屋久島沖で発生した米軍機オスプレイの墜落事故は、日本の主権に関わるこの問題を改めて浮き彫りにしている。

東京都新宿区の防衛省。(撮影/編集部)

 墜落したのは、横田基地(東京都)に配備されている米空軍第353特殊作戦航空団所属のオスプレイで、岩国基地(山口県)から嘉手納基地(沖縄県)に向かって飛行訓練を行なっていたところ、屋久島沖でレーダーから機影が消えた。直前には屋久島空港に緊急着陸の連絡があったという。

 オスプレイは、ルーター(プロペラ)を傾けることができる航空機で、回転翼機と固定翼機の両方の特性を併せ持つ。滑走路がない場所でもヘリのように垂直離着陸することができ、上空ではプロペラ機としてヘリよりも高速で飛行できる。

 海兵隊はオスプレイを「輸送機」と位置付けているが、空軍は「特殊作戦機」として運用している。特殊部隊の敵地への侵入や離脱を担うのが主な任務だ。敵の探知を避けるための超低空飛行や夜間無灯火飛行など、海兵隊オスプレイよりもリスクの高い訓練を日常的に実施している。そのため、事故の発生率は海兵隊のオスプレイを大きく上回っている。

 今回の屋久島沖での事故原因は現時点では不明だが、左のエンジンからの出火が目撃されていることから、エンジン関係のトラブルが原因になった可能性がある。

 オスプレイのエンジンからの出火は、昨年10月に米カリフォルニア州でも発生している。この時も着陸の直前であった。出火の原因は今もわかっていない。

 ほかにも、昨年6月に米カリフォルニア州で起きた海兵隊オスプレイの墜落事故の原因となった「ハード・クラッチ・エンゲージメント」(エンジンとルーターをつなぐクラッチが離れて再結合する際に衝撃が発生する現象)をはじめ、オスプレイの機体にはさまざまな構造上の問題点が指摘されている。

根底には日米地位協定

 木原稔防衛大臣は事故翌日、在日米軍のラップ司令官を防衛省に呼び、捜索救助活動を行なう機体を除き、安全が確認されるまでオスプレイの飛行を停止するよう要請した。

 しかし、司令官から飛行停止に応じるとの回答は得られず、海兵隊のオスプレイは事故後も飛行を続けている(※空軍は12月4日現在、飛行を停止している)。

 これについて木原防衛相は「日本政府の要請にもかかわらず、飛行安全についての十分な説明がない中、オスプレイの飛行が行なわれていることについては懸念を有している」(1日の記者会見)と米軍への不満を表明した。

 このような米軍の対応は今回が初めてではない。2017年8月に沖縄県の普天間基地所属の海兵隊オスプレイがオーストラリア東部沖で墜落した際も、当時の小野寺五典防衛相が日本国内で飛行を自粛するよう要請したが、米軍は無視して飛行を継続した。

 ところが、日本政府はこれに抗議するのではなく、数日後には「米軍がオスプレイの安全な飛行は可能であると説明していることは理解できる」として自粛要請を取り下げた。

 こうした米軍言いなりの姿勢が今回の米軍の対応にもつながっていると考えられる。はっきり言って、日本政府は米軍に舐められているのだ。

 また、根底には米軍の運用に日本政府の権限が及ばない日米地位協定の問題がある。同協定は公共の安全に妥当な考慮を払うよう米軍に求めているが、その義務が果たされなかった時に日本政府が米軍の活動を規制できる権限がない。米軍基地からの有害化学物質「PFAS」の漏出問題でも言えることだが、これでは日本国民の安全に責任を持つことはできない。

 米国の顔色ばかりうかがい、日米地位協定の改定を締結から63年間一度も求めてこなかったことも、日本政府が米軍に舐められている要因の一つだ。

(『週刊金曜日』2023年12月8日号)

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