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「不条理の間に一筋の光が差すようなルポルタージュ」雨宮処凛

雨宮処凛|2023年12月8日2:28PM

『週刊金曜日』編集委員・雨宮処凛

 2023年もあと少しで終わりだ。

 今年は1月に河出書房新社から『学校では教えてくれない生活保護』(3刷になりました!)を出版し、6月にはビジネス社から白井聡さんとの対談本『失われた30年を取り戻す 救国のニッポン改造計画』を出版。また9月には、かもがわ出版から中島岳志さん、杉田俊介さん、斎藤環さん、平野啓一郎さんと対談した『秋葉原事件を忘れない この国はテロの連鎖へと向かうのか』を出版した。

 本もたくさん読んだ。そんな中、印象深いのは『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』(三浦英之著、集英社)。出版は昨年10月だが、最近読んだ。

 本書の帯には、以下のような言葉が躍る。

「資源を求めた日本がアフリカ大陸に残したものは、巨大な開発計画の失敗とさび付いた採掘工場群。そして、コンゴ人女性との間に生まれた『太陽の子』だった――」

 この本を読むまで私は、遠く離れたコンゴに、自分と同世代の「日本人残留児」が存在するなんて、まったく知らなかった。

 なぜ、残留児は生まれたのか。

 それは1960年代後半、日本を代表する鉱物資源企業「日本鉱業」がコンゴに巨大な銅鉱山を開設するプロジェクトを始めたことによる。社員や医師、教師、厨房要員など約550人の日本人が派遣され、帯同家族も入れると約670人にのぼった。

 そんな中、現地の女性と結婚し、子どもを持つ日本人も現れたのだ。

 しかし、日本鉱業の撤退とともに、父親たちは日本に帰国。「ユキ」「ケンチャン」など日本の名前をつけられた子どもたちが取り残された。そんな彼らも今や中年にさしかかっているが、50人ほどが「子どもたちの会」を作っているのだ。写真を見ると、顔立ちには日本人の面影が色濃く見える。小さな頃は「白人」といじめられ、父系社会のアフリカで、父親がいないことから苦労が絶えなかった子どもたち。それでも父に会いたいと言う。だが、「日本鉱業」の後継企業は、彼らの存在そのものを「そのような事実は確認できなかった」と否定する。

 高度経済成長の日本が資源を求めて世界に進出する中、生み出され、置き去りにされた子どもたち。そんな彼らを支える日本人シスターが清々しい。さまざまな不条理の間に、一筋の光が差すようなルポルタージュだ。

(『週刊金曜日』2023年12月8日号)

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