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「激震走る自民党派閥の裏金疑惑」宇都宮健児

宇都宮 健児|2023年12月22日2:39PM

『週刊金曜日』編集委員・宇都宮健児

 自民党派閥の政治資金パーティをめぐる収入の過少記載や裏金疑惑が発覚し、自民党と岸田政権に激震が走っている。

 とくに自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)は、直近5年間でノルマを超えてパーティ券を販売した所属議員にキックバック(還流)した裏金の総額が約5億円に上るといわれている。いずれも派閥や議員側の政治資金収支報告書には収支の記載がないといわれているので、政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)となることは明らかだ。

 岸田文雄首相はこの問題の対応策として当初各派閥へのパーティ自粛の指示、自身の岸田派離脱を打ち出したが、最近では安倍派所属の閣僚や副大臣、党幹部を交代させる方向で調整に入ったといわれている。

 現行の政治資金規正法は、政治家個人への献金は「賄賂」になりやすいので、企業・団体献金を受けられる政治団体を政党と政党の政治資金団体、政党支部に限っている。ところが、政治資金集めのパーティ券は、派閥や議員個人の政治団体でも企業・団体に購入を求めることができる。そして、パーティ券の大半は企業・団体が購入しているのが実態といわれている。

 リクルート事件をはじめとする政治腐敗を解消する目的で1994年に成立した政党助成法による政党助成制度は、企業・団体献金を制限するかわりに政党に対し、国が助成する制度である。

 助成金の総額は国民一人あたり年間250円で決められた額で、2023年の政党交付金の総額は約315億円であり、自民党にはこのうち約159億円が、立憲民主党には約68億円が交付されることになっている。政党助成制度は、企業・団体献金の廃止をにらんだものであったが、前述したとおり政党や政党の政治資金団体、政党支部への企業・団体献金は残された。そして今回問題となっている政治資金パーティの実態は、形を変えた企業・団体献金となっているのである。

 国民の政治不信は極限に達している。岸田首相は、この問題に正面から取り組むべきだ。安倍派所属の閣僚や党幹部を交代させるだけでは問題の解決にならないことは明らかだ。企業・団体によるパーティ券の購入を含む政治献金の全面禁止、収支報告の透明化、罰則の強化など政治資金規正法の抜本的な改正に乗り出すべきだ。

(『週刊金曜日』2023年12月22日号)

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