視覚障害持つ留学生支援に「地球市民賞」
各地で貴重な就学機会提供
竹林一浩・フリーランスライター|2024年1月30日7:02PM
ウクライナ戦争やガザでの虐殺など困難な局面が続く国際社会にあって、文化交流を通じた市民同士の連携の重要さが改めて認識されている。独立行政法人の国際交流基金が1985年に創設した「国際交流基金地球市民賞」の、今年度の受賞団体の発表・記者会見が1月16日、東京都内で行なわれた。今年度は78件の応募から社会福祉法人「国際視覚障害者援護協会」(IAVI、石渡博明理事長。東京・板橋区)など3団体が選ばれた(1団体は18日発表)。
IAVIはアジアなど開発途上国の視覚障害のある若者を日本に招き、各地の盲学校への留学を支援、あん摩・マッサージや鍼灸の職能習得を手助けする活動を続けている。創設から52年間で19カ国・地域の留学生89人を受け入れた。「自立や社会参加が困難な国々の視覚障害者に対して、未来を切り拓くきっかけを提供するとともに、発展途上国の障害者理解の増進にも貢献」したことなどが授賞理由だ。帰国後、留学生は開業するだけでなく指導者としても活躍。モンゴルのバトバヤル・エンフマンダハ氏は2014年に帰国後、奨学団体を設立。地方在住で盲学校や点字の存在すら知らず、勉学の機会に恵まれない子らを首都に呼び、就学機会を与えてきた。
だが石渡理事長によると、近年は日本社会の狭量さが増し、受け入れ先の盲学校に「留学生になぜ税金を使うのか」などのクレームが入るようになったという。「以前はたたき上げの校長が不当な攻撃から守っていましたが、今は抵抗力も弱体化しました」という。
また、文部科学省から出ていた補助金は、減額続きの末、「国益に資さない」として18年に廃止された。毎年2人いた留学生は1人かゼロに。副賞の200万円では一般の寄付に頼る運営の改善は困難だ。が、石渡理事長は「障害者支援関連以外の賞の受賞は初めて。愚直に続けていきたい」と話す。
(『週刊金曜日』2024年1月26日号)