自衛隊ハラスメント問題で弁護士らが調査結果発表
「防衛省の対策はポーズだけ」
竪場勝司・ライター|2024年1月30日7:09PM
弁護士グループ「自衛官の人権弁護団・全国ネットワーク」は1月15日、自衛隊員らを対象にしたハラスメントに関するウェブアンケート(昨年11月17日号で既報)の結果を公表した。防衛省が取り組むハラスメント対策について、約90%の回答者が「有効とは思わない」と指摘。「自衛隊にはハラスメントを肯定する文化、声を上げた者を罰する文化が存在している」との意見も見られた。
元陸上自衛隊員・五ノ井里奈さんの性被害告発を機に防衛省は特別防衛監察を2022年に実施。隊内の相談対応の見直しやハラスメント防止教育などを進める。だが同ネットワークでは「こうした対策の有効性には疑問がある」として、リアルな実態を探ることでハラスメント根絶につなげるためこのアンケートを実施した。調査期間は昨年11月から12月。対象は自衛官やその家族らで有効回答は計143件。当事者の被害当時の年齢は10代3人、20代28人、30代29人、40代33人、50代14人。幹部クラスからの回答も含まれるとみられるという。
当事者の回答中、ハラスメントを隊内で相談した人は70・5%、相談していない人は29・5%。後者の理由としては「内部で相談すると加害者からの報復や組織から不利益に遭う」を挙げた人が最も多かった。また、前者の6割が、相談したことを理由に退職強要や減給などの不利益処分を受けたと回答している。
「ハラスメントを根絶する現状の様々な取り組みは防止に有効か」との問いに対しては「有効だとは思わない」の回答が89・2%を占めた。その理由としては「ハラスメントした人たちが昇任しているし、対策はポーズだけだと思う」といった声もあった。
同ネットワークでは自衛隊のハラスメント根絶を求めるオンライン署名(https://chng.it/dqygDZygLL)にも取り組んでいる。
(『週刊金曜日』2024年1月26日号)