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「災害は弱い立場の者にこそ牙を剥く」雨宮処凛

雨宮 処凛|2024年1月30日6:25PM


雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員。

 能登半島をマグニチュード7・6の揺れが襲った時、あなたは何をしていただろうか。

 元日、家族とくつろいでいた人もいるだろうし、旅先にいた人もいるだろう。友人の一人は、石川県の実家に帰省中に被災した。幸い、本人も家族も家も無事だったものの、新幹線が止まったことなどで東京に戻るのがとにかく大変だったという。

 私はといえば、東京・早稲田の「反貧困ネットワーク」事務所が入るビルで開催された「大人食堂」で相談員をつとめていた。

 困窮する人にお雑煮などを提供し、生活相談や法律相談、医療相談に乗ったり衣類や生活用品を配布する取り組みだ。

 新型コロナが5類に移行して初めて迎える年末年始。どれくらいの人が来るのだろうと思ったら、午後1時の開始前からビルには長い行列。午後いっぱい、多くの人の相談に耳を傾けた。仕事を失い、2カ月近く路上生活が続いている高齢の男性。コロナ禍での生活苦から借金したことで、今、その返済に苦しめられているという若い男性。それ以外にも、仕事がない、住まいがない、この先の生活の見通しが立たないなどの悲鳴を多く聞いた。

 大人食堂は昨年12月30日にも開催され、142人が参加。うち女性は約34%。そうして元日はそれを上回る185人が訪れ、うち女性は27%。後日、生活保護申請に同行することとなった人も数名いた。

 世間ではすっかりコロナ収束ムードが漂うものの、長引く物価高騰もあり、庶民の生活は逼迫している。この年末、毎週土曜日に開催されている東京都庁下の食品配布に並ぶ人は、779人と過去最多を更新。コロナ前は50~60人だった場だ。また、月に2回開催される池袋のTENOHASIの炊き出しには、コロナ前は150人ほどが並んでいたのが昨年一年、平均すると540人ほどが並んだという。

「5類になっても、人は減らない。減る気配もない」

 現場の支援者は揃って口にする。

 そんな最中、能登半島を襲った地震。まだ被害の全容もわからないような状況だが、災害は、弱い立場の者にこそ牙を剥く。これまでの災害を見ても、避難時に最後まで取り残されるのはお金もなく、頼れる人もなく、情報もない層だ。

 どうか、誰一人取り残されないように。年のはじめ、祈るように思っている。

(『週刊金曜日』2024年1月26日号)

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