「防災省」の設置を検討すべき 宇都宮健児
宇都宮 健児|2024年2月13日2:56PM
能登半島地震が発生してから1カ月が経過した。現時点(2月1日現在)の死者は240人、安否不明者は15人、避難者は体育館などの1次避難所に避難している人が9557人、宿泊施設などに2次避難している人が4792人、合わせて1万4000人を超える。停電はほぼ復旧したが、断水は8市町村で4万戸を超えている。
能登半島地震で亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りするとともに、被災された方々に対し、心よりお見舞いを申し上げたい。
わが国では、1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震、11年の東日本大震災、16年の熊本地震、18年の北海道胆振東部地震、今回の能登半島地震に見られるように、地震により甚大な被害が発生し続けている。
そして、地震災害が発生する度に見られるのが、プライバシーがまったく配慮されない体育館や、公民館の冷たい床の上で雑魚寝を余儀なくされている避難者の光景である。劣悪な避難所の環境は災害関連死の多発につながっている。東日本大震災の災害関連死は3792人、熊本地震の災害関連死は226人となっている(いずれも23年4月14日現在)。とくに熊本地震では、地震で直接死亡した人は50人だったので、災害関連死は地震で直接死亡した人の4倍を超えている。
わが国と同じ地震大国のイタリアでは、3000人近くの犠牲者を出したイタリア南部イルピーニア地震で地震による直接死よりも、災害関連死の方が多かったことの教訓から、1982年に「市民安全省」という常設の国家機関が設置されている。
災害対策も抜本的に見直され、避難所には「TKB(トイレ、キッチン、ベッドの頭文字)」が標準装備され、シャワー付きのトイレや、家族ごとに生活できる大型テントとベッド、プロの調理師が温かい食事を提供するキッチンカーなどの資・機材が全国の州ごとに備蓄されているということである。そして、災害発生から48時間以内にこれらが装備された避難所を設置することが、法律で定められている。
地震大国でありながら、わが国の避難所の実態はまったく進歩がないと言わねばならない。イタリアの経験も参考にしながら、わが国でも国家レベルでの常設の「防災省」の設置を検討すべきだと考える。
(『週刊金曜日』2024年2月9日号)