「クオータ制」導入に向けて超党派国会議員が議論
「女性の意見をしっかり政治に反映を」
阿久沢悦子・生活ニュースコモンズ|2024年2月19日3:40PM
超党派の女性国会議員が隔月で開く「クオータ制実現に向けての勉強会」が2月6日、参議院議員会館であった。今回のテーマは「労働基準法改正」。女性管理職比率の公表が義務化されるなど、クオータ制(※)で先んじた経済界の変化を政治の世界にどうつなげるかをめぐり議論が交わされた。
会合では京都大学の柴田悠教授と、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長から、労基法改正が提言された。
柴田氏は「賃金を下げず労働時間を短縮できれば、女性が望む『共働き・共育て』が実現でき、少子化も緩和される」と主張。日本では有償労働時間が男性は40年前からほとんど減らない一方、女性は逆に延びた。育児負担による女性の幸福感低下が結婚や出産の回避につながっていると指摘した。
「労働時間短縮を実現するために労基法改正という大きな起爆剤が必要」とする柴田氏は「勤務間インターバル11時間の義務化」「残業時間の割増率を1・5倍に」「法定労働時間を週35時間に」などの手を打つよう要望。こうした法改正実現のためにも、クオータ制導入で女性の意見をしっかり政治に反映させる必要がある、とした。
小室氏は「ゲームチェンジのための8つのステップ」を掲げた。
①グローバルレベルの労基法に改正。
②経済界トップに女性役員比率が高まる。
③国会議員の働き方改善に経済界・国民からの圧力が得られる。
④具体的な選挙活動ルール・国会ルールが変革される。
⑤「選挙活動中」「国会会期中」にも議員が育児・介護ができるようになる。
⑥女性議員・ダイバーシティ議員が各党の幹部に。
⑦多様な国民が抱える課題が、真に政策に反映される日本へ。
⑧少子化打破が加速・多様な労働力の活躍で日本経済再生。
「世界に30年遅れ」の現状
辻元清美参議院議員(立憲民主党)は「政治家が一番遅れている。男が24時間戦い、妻が地元と子育てを守る空気や文化がある。そこを変えていかないと」と話した。
倉林明子参議院議員(共産党)は「日本と世界の差は30年。共産党も例外ではない。今、比例名簿で候補者を男女交互にすることで結果としての同数を目指そうとしている」と述べた。
福島瑞穂参議院議員(社民党)は30年前に夫婦交互で保育園のお迎えに行った経験から「共働きなら週の半分を早く帰ればいい。これまで労働組合は残業規制をすると給料が減ると言ってきたが、ベース賃金を上げ残業に頼らないようにしたい」と提言。
櫛渕万里衆議院議員(れいわ新選組)は「大企業だけでなく、庶民の暮らし、中小企業の意識を変えていく。社会保険料の負担が減るような中小企業向けのインセンティブが必要」とした。
現役の子育て世代として国会議員の働き方改革に言及したのは、野田聖子衆議院議員(自民党)だ。
「(自身の)大臣時代に官僚の早朝レクをやめ、前夜のうちにLINEで質問と答弁書を確認できるようにした。やればできる」
伊藤孝恵参議院議員(国民民主党)の代理で出席した玉木雄一郎衆議院議員(同)も「伊藤議員は保育園の送迎のため午前8時15分からしか会議に出席できない。開始時間を8時半に変える必要が出てきた。こうしたことに気づくためにも議員に子育ての当事者を増やさないといけない」と話した。
石井苗子参議院議員(日本維新の会)は2024年問題に絡めて、物流業界から「労働時間短縮を押しつけてくるのをどうにかしてほしい」と要望を受けたと明かした。「若手が休むと周囲が回らなくなる現状がある。中小企業でどうやったら休みながら労働効率を上げていくことができるのか」
野田議員は「私たちは立法府。自身が悪者となり『法律が決まったんだからやらなきゃ』というコースを作らなければならない」と応答。労基法改正も「労働時間短縮に向け、あと一歩の後押しになるならやれると思う」と述べた。
※クオータ制=政治においては、議会における男女間格差を是正すべく議員・候補者の一定数を女性と定める制度を指す。
(『週刊金曜日』2024年2月16日号)