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災害時「屋内退避の運用」だけにとどめる原子力規制委員会に「責任放棄」の声
佐藤和雄・「脱原発をめざす首長会議」事務局長、ジャーナリスト|2024年2月29日5:39PM
本誌2月2日号でお伝えしたように、能登半島地震の被害実態を受けて東北電力女川原発(宮城県)周辺の自治体首長が「屋内退避は誰が、何を基準にするのか」と問題提起。これに対し原子力規制委員会の山中伸介委員長が「この点について今後、原子力災害対策指針を改善していかなければならない」と約束していた。
本誌を含めいくつかのメディアは「原子力災害対策指針の見直しへ」と題する記事を書いたが、山中委員長はその後「指針の見直しはせず」「屋内退避の運用見直し」に変わった。これで原発周辺の住民らの安心は得られるのか。
2月14日の原子力規制委員会では、山中委員長の方針通りに、原子力災害対策指針(原災指針)そのものの見直しについての議論はされなかった。「屋内退避の運用」だけが議題になったのである。国際環境NGOの「FoE Japan」などは原子力規制委員会側に要請書を提出し「震災で生じたこと/指針・避難計画の内容との乖離」(上の表を参照)の問題を具体的に示したが、触れられることはなかった。
原子力規制庁が同日の委員会に示した「原子力災害時の屋内退避に関する論点」では「原災指針では、放射性物質の放出後に空間放射線量率を踏まえた避難や一時移転の実施が定められているものの、屋内退避の解除や避難への切り替えの判断の考え方は示されていない」という問題を指摘。そのうえで「屋内退避という(放射線被ばくの)防護措置を最も効果的に運用するため」に①屋内退避の対象範囲と実施期間、②想定すべき事態の進展の形、③屋内退避の解除または避難・一時移転への切り替えを判断するにあたって考慮する事項――の3点を挙げた。山中委員長らはこの論点整理に同意し、具体化するために東京電力福島第一原発事故を経験した人物らによる検討チームの発足を決めた。
「FoE Japan」の満田夏花事務局長は、こうした原子力規制委員会の対応について次のように話す。
「複合災害では避難も屋内退避もできないことが大いにありうる。その場合、住民は高線量の被ばくにさらされることになるが、規制委はそれを許容するのか。今回の能登半島地震では多くの家屋が倒壊した。避難所に行けず、農業用ハウスや倉庫、車中泊でしのいだ人もいる。道路は寸断され、地盤は隆起し、港も使えず、避難も困難。通信も遮断されていたので、自治体から住民への避難指示も伝わらなかっただろう。自治体職員も地震対応で手いっぱいの状態。破綻は明らかなのにもかかわらず、原災指針の見直しをしないというのは規制委の責任放棄だ。『最大の防護は原発を止めることしかない』ことが明らかになることを恐れているのだろうか」
(『週刊金曜日』2024年2月23日号)