「脱税」で自民議員を刑事告発
生活保護費引き下げの旗振り役も
雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員|2024年3月1日7:06PM
「コロナ禍で仕事がなくなった時に借金をし、その返済で家賃が払えない」
「失業と物価高騰で生活が苦しく、電気、ガスがすでに止まっている。残金50円。数日マトモに食べていない」
これらの言葉は、今年になってから耳にしたものだ。
新型コロナが5類に移行して、あと2カ月で1年。街のあちこちで外国人旅行者を見かけるなどコロナは収束ムードだが、一度痛めつけられた人々の生活はすぐに再建できるものではない。というかそもそも、コロナ前から日本社会は非正規化・不安定化・低賃金化が進み満身創痍。以前の苦境が戻っただけだ。
そんな中、昨年末から連日報じられているのは自民党の裏金問題。
政治資金規正法違反として12月から本格的な捜査が始まり、年末までに安倍派「5人衆」全員が東京地検特捜部の事情聴取を受ける結果になった。
こんなことから、主要な議員全員立件されるのでは、と思っていた人も多いだろう。が、立件されたのは政策秘書、会計責任者など10人だけ(辞職した議員も含む)。大物揃いの「5人衆」を含む幹部議員らは不起訴処分となり、捜査は終結。そんな結果には誰も納得していないのに、「政治とカネ」問題はこのままうやむやにされ、幕引きとなりそうになっている。
そんなことは許さないと、2月1日、大きな動きがあった。
一連の裏金問題に憤る人々によって「自民党ウラガネ・脱税を許さない会」が結成され、「5人衆」を含む10人の自民党議員を「所得税法違反(脱税)」で刑事告発したのである。
午後2時から開催された記者会見には私も参加。5人衆の1人であり、1500万円以上のキックバック問題に揺れる世耕弘成議員は2013年から始まった生活保護引き下げの旗振り役であり、弱者を切り捨て、自身に甘い政治姿勢に異を唱えた。
『毎日新聞』が2月17、18日に実施した調査によると、問題の議員を国税庁が調査すべきと答えたのは93%。確定申告の時期、「庶民には増税、政治家は脱税?」と怒りの声が高まっている。
刑事告発の行方がどうなるのか、見守っていきたい。
(『週刊金曜日』2024年3月1日号)