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「困難な問題を抱える女性支援法」4月施行前に問題山積で不安の声
吉永磨美・編集部|2024年3月12日4:32PM
「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(以下、支援法)が4月から施行される。同法は、女性が女性であることによって、さまざまな困難に直面することが多い状況を鑑み、福祉増進などを目的に2022年5月成立。外国人も含む若い女性が、暴力や貧困などの複合的な困難を抱える中、たとえば適切な支援を得られないまま出産して新生児が死亡するといったケースについても包括的に支援できる社会を目指している。
その支援法の施行を前に、各都道府県が同法を実施する基本計画案の公表を始めている。ところがその内容をめぐり「議事録が非公開で具体的な計画が見えないまま議論が進められた」「実施の中核である婦人相談機関の拡充が見えない」「民間の支援団体が委員におらず、連携について具体的ではない」などの問題を指摘する声が、女性支援の関係者から上がっている。
東京都も2月16日~3月18日に基本計画のパブリックコメントを募集。家族からの暴力にあうなど自宅に戻れない未成年の女性たちが集まって生活したり、困窮する女性の売買春の事例が多い新宿・歌舞伎町を抱えたりしているだけにその動向が注目されている。
都の福祉局子供・子育て支援部育成支援課によると、パブコメを集約し、計画に反映させるか否かを判断のうえ計画検討委員会をもう1回開いて審議を経た後、3月末までに策定を進める予定とのこと。募集の締め切りから残り2週間を切る中で進める流れだ。委員会の議事録は、話し合いに出てくる事案のプライバシー確保などのため公開してこなかったという。
計画の実施期間は来年度からの5年間。困難な問題を抱える女性の人権擁護や、男女平等の実現に資するものとして、本人の意思を尊重しつつ安全に、かつ安心して自立した生活を送れるようにすることを基本理念とする。
支援法では、1956年制定の売春防止法を根拠にした保護更生ではなく、福祉の視点から女性の支援が行なわれることへの期待が寄せられている。東京都の場合、都の女性相談支援センターや、都・区・市の各自治体に配置された女性相談支援員、または女性自立支援施設の基盤の充実・強化なども明記。医療機関や警察、民間団体との連携・協働による支援体制の構築も、計画策定のポイントとして掲げられている。
「支援センター」強化を
だが、法施行を前に現場からは不安の声が上がっている。計画の実施にあたる婦人相談員からは、「相談員の大半は1年ごとの契約期間の会計年度任用職員(非正規雇用)。切れ目ない支援が難しい」との指摘が出ているほか、計画や実施に向けた議論の中身を知らされていない相談員もいるという。
配偶者からの暴力や、ドメスティック・バイオレンス(DV)被害者の相談支援などをする民間団体「全国女性シェルターネット」は各都道府県が進める基本計画について不十分だと批判する。困難を抱えた女性への相談窓口が主に市区町村と警察で、各都道府県の婦人保護施設、母子生活支援施設も一時保護は行なうが、この支援の構造に問題があり、本当に支援すべき人をとりこぼしているとの指摘だ。一時保護の受け入れには自治体ごとに条件があり、入所できないケースも多々あるという。
同団体としては、この女性相談支援センターの抜本的な体制強化と支援内容の大幅な変更をすべきだと訴えたうえで、
①センターの人員増や支援員の権限拡大が必要なはずだが、動きがなく、改革計画が見えない
②一時保護基準が明確ではない
③直接被害者が一時保護を訴え入所する支援経路が検討されていない
④あまりに施設主義であり、自力避難した被害者への継続支援、中長期支援がほぼ書かれていない
⑤性暴力ワンストップセンターについての位置づけがない自治体もあり、ばらつきがみられる
――など都道府県の計画案について問題点を指摘する。法の実施まで1カ月を切った今、実態を踏まえた計画の策定が期待される。
(『週刊金曜日』2024年3月8日号)
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