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HPVワクチン訴訟、原告の1人が実名公表 
「私と家族の悲しみ知って」

高波淳・フリージャーナリスト|2024年3月12日5:13PM

 国が接種を呼びかけたHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の接種後に激しい痛みや健康被害などが生じたとして、女性たちが国と製薬会社2社に損害賠償を求める訴訟の原告本人尋問が2月21日に東京地裁であった。原告の1人で、これまで匿名で活動してきた栃木県足利市の倉上万莉佳さん(25歳)が、尋問を機に実名を公表した。

2月21日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見する倉上万莉佳さん。(撮影/高波淳)

 倉上さんは小学6年生、12歳の時にHPVワクチンを3回接種した。その後、月経不順や、地震で揺れているような目まい、物忘れをしやすく3人以上の会話についていけない、などの症状が出た。激しい倦怠感に襲われる様子は「自分の上に人が5人ほど乗っていてベッドから起き上がることができないような状態。苦しくて涙がにじむ日もある」という。

 子どもの頃から遊ぶ時間を惜しんで勉強するほど勉強が好きで、進学校の高校で学んでいたが、体調の悪化により、大学を受験することができなかった。高校卒業後の療養生活の中では自分の存在意義が見いだせず、友人たちから取り残される感覚に苦しんだ。「ワクチンは両親が私にくれた大事な体をどんどん壊し、私と家族の幸せさえも壊していった」。

 実名で被害を訴えることで偏見やバッシングにさらされることを恐れ、長い間、名前と顔を伏せて「東京原告56番」として活動してきた。「自分の被害を伝えることは自分の傷口を開くのと同じ」との思いもあった。だが「私と家族の長く深い悲しみを多くの人に知ってほしい。これ以上私たちと同じような被害を繰り返さないでほしい」と実名公表に踏み切った。

 東京、名古屋、大阪、福岡の4地裁で原告117人が闘う。製薬会社側はこれまでに「ワクチンは有効・安全で原告らの症状と関連性はない」などと主張し争っている。国は2022年4月にワクチン接種の積極的勧奨を再開した。

(『週刊金曜日』2024年3月8日号)

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