大阪高裁、美浜3号機運転差止認めず
能登半島地震踏まえぬ「不当決定」に強い憤り
脱原発弁護団全国連絡会|2024年4月1日8:52PM
大阪高裁第11民事部(長谷川浩二裁判長)は3月15日13時半、住民らが、美浜原発3号機の運転差止めを求めていた仮処分事件の即時抗告審において、住民らの即時抗告申立を棄却した。
決定文交付直後、弁護団共同代表の井戸謙一弁護士は、「裁判官にとって1基止めるのがそれほどハードルが高いのか。別に全国の原発を止めろというのでない。老朽化した美浜3号機が危険だから止めることで、多くの人の生命、身体、健康、平穏な生活に対する大きな不安を取り除ける。それなのに、たかが美浜3号機を止めることが裁判官にできないのかというのが率直な思い」と憤慨した。
そして「能登半島地震があって、人間の知力や知識などものともしない自然の大きな力と原発の脆弱性を誰もが目の当たりにした。そういう認識を踏まえた決定が出ると期待していたが、大変残念な不当な決定。
非常に重要な争点である、新規制基準では震源が敷地に極めて近い場合には、さらに十分な余裕を考慮して基準地震動を策定すべきとしているが、関電はこれを考慮していない問題について、関電の提出した熊本地震で短周期地震動が出たと評価されていないという一点のみをもって、住民側の立証はほとんど考慮せず、本件を震源ごく近傍と判断しなかった。双方が出した証拠をちゃんと重視して、全体像から合理的な判断すべきなのに、こちらの申立てを退けうる証拠だけをピックアップして退ける形の論述が目につく、非常に不公平な判断である。
非常に残念だが、今月中に同じ美浜原発について、福井地裁の判断がなされる。裁判長は震源ごく近傍に興味関心を示し、双方に質問していたので、正面から取り組んだ判断を期待している」と述べた。
弁護団の大河陽子弁護士は、避難計画についての裁判所の判断に対して、「避難計画が機能していないことは、申立て当時から主張し、能登半島地震を受けて改めて屋内退避も避難もできないと主張したが、裁判所は避難計画を検討するまでもないとして棄却しており、驚いた。船舶は救命ボート等の救命設備を装備していない場合に航行を許可されない。原発も住民が被曝(ひばく)してしまうような場合に運転してよいとならない。避難計画の不備欠落を見逃す決定では、住民はどうすればよいのか、被曝を強いられるのか。到底納得できない」と批判した。
抗告人の木原壯林さんは「能登半島地震は地震がいつどこでどの規模で起こるかわからない、原発は地震に脆弱、過酷事故が起きたら、避難不可能だと、大きな犠牲のもとに教えてくれた。今回の決定は政府や関電の言いなり、彼らに忖度した決定だ」と断じた。
美浜原発から10キロメートルに住む抗告人の山本雅彦さんは、「能登半島地震で、敦賀漁港では引き波が起きた。大津波がくるのではと周辺住民は徒歩や車で逃げた。美浜町でも津波警報が出て、3メートルの津波が来たら海岸の家がほとんど沈むので逃げた。能登半島地震が起きて、大きな被害があったのに原発を動かすなんて正気の沙汰ではないと、多くの方が実感、経験した。しかし関電に問い合わせたら、今日は正月休みで、原発を動かすかどうか検討しない、考慮しないという。私たちは避難したのに。大阪高裁は住民の不安に真摯に耳を傾けて判断を下してほしかった」と憤った。
美浜から15キロメートル弱の距離に住む抗告人の石地優さんは「能登半島地震が何の反映もされない決定が出るのか!というのが、率直な気持ち。ものすごく止めてほしいと思っていた。能登地震を経験した福井地裁は、大阪高裁より私たちに近い形で考えてくれると思う。普通に考えれば止めないとおかしい」と期待を述べた。
3月18日、福井地裁より、3月29日13時に決定文交付との連絡があった。裁判所の判断に期待したい。
(『週刊金曜日』2024年3月29日号)