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再審法改正へ 与野党議員が議連を発足「先延ばしせず今改正を」

佐藤和雄・ジャーナリスト|2024年4月11日7:29PM

「ついに」と言うべきか、「ようやく」と言うべきか――。与野党の国会議員たちが史上初めて、えん罪被害者の速やかな救済を実現するため、再審法(刑事訴訟法の再審制度の規定)の早期改正に動く議員連盟を3月11日、発足させた。これまでその問題には気づきながらも、多くの国会議員が結束して行動を起こすには至らなかったが、袴田事件で年齢を重ねた当事者の姿や、日本弁護士連合会(日弁連)による粘り強い働きかけが、法改正をめざす動きにつながった。

右から、自民党の柴山昌彦・元文部科学相、逢坂誠二・立憲民主党代表代行、玉木雄一郎・国民民主党代表。(撮影/佐藤和雄)

「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」と名付けられた団体には、衆参の各党国会議員134人がメンバーとなった。会長には自民党の元文部科学相の柴山昌彦衆議院議員、幹事長には立憲民主党代表代行の逢坂誠二衆議院議員、事務局長には自民党の井出庸生衆議院議員が就いた。呼びかけ人には自民党の麻生太郎副総裁、公明党の山口那津男代表、立憲民主党の泉健太代表、日本維新の会の馬場伸幸代表らが名前を連ねた。

 国民民主党の玉木雄一郎代表も呼びかけ人になったほか、3月11日の設立会合に出席し、次のようにあいさつした。

「大変難しい問題ではありますが、人権の問題、同時に司法の公正性をどう担保するのかという、国家のありようそのものにかかわる非常に重要な問題だと思っております。党としても関心を持って取り組みたいし、各党の先生方としっかり協力して、進めてまいりたい」

 事務局によると、メンバーの半数以上が自民党の議員という。会長となった柴山氏は記者会見で「最大の意味は、与党の国会議員がこれだけ多く集まったこと。政策実現のためのムーブメント(動き)がある」と語った。

 また、議員連盟の発足がなぜこの時期となったかについて問われた幹事長の逢坂氏は「袴田事件の結論(判決)が早々にも出る。(法改正は)国民のみなさんには後押ししていただく必要があるので、世論の盛り上がりとちょうど良いタイミングだと思っている」と述べた。

日弁連の働きかけに呼応

 静岡地裁で再審公判が開かれている袴田事件。袴田巖さんが死刑確定判決を受けて第1次再審請求を申し立てたのは1981年4月のこと。それから実に43年もの歳月を経ており、巖さんは88歳。姉ひで子さんは91歳となっている。逢坂氏の言葉にあるように、国会議員たちがこの厳しい現実を受けて動きだしたのは間違いない。

 同時に、日弁連による国会議員らへの働きかけも大きかった。

 現在の小林元治会長が2022年4月に就任後、同年6月に「再審法改正実現本部」を設置。自身が本部長に、大崎事件の再審問題に長年向き合ってきた鴨志田祐美弁護士を本部長代行にして組織的に取り組んできた。

 昨年2月には再審法改正の要綱案と条文案を提言。5月と11月には国会議員への一斉要請を実施し、6月には院内集会も開催。

 自民党実力者の麻生太郎氏が呼びかけ人となったのは、青年会議所のつながりで親睦のあった小林会長の働きかけが大きいという。

 3月11日の設立総会では、2014年3月に袴田さんの再審開始と拘置の停止を決定した静岡地裁の裁判長だった村山浩昭弁護士が基調講演に立ち、目の前の国会議員らにこう呼びかけた。

「最後に申し上げたいのは、今の日本の刑事訴訟法ではえん罪被害者はなかなか救われません。運用で解決するのは限界です。どうしても改正が必要です。えん罪は、国家による人権侵害です。人権問題を解決するために国会議員の皆様方は力をあわせて、よい改正案を練っていただきたい。先延ばしをせずに今改正する、という決意で臨んでいただきたい」

(『週刊金曜日』2024年3月29日号)

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