「障害者らへの強制不妊手術、国は被害者に早急の救済を」雨宮処凛
雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員。|2024年4月11日7:44PM
「私たちの人生を返してください。私たちの幸せを返してください。過去には戻れませんが、国は私たちに謝ってほしいです」
3月21日午後。悲痛な声が衆議院第一議員会館に響き渡った。この日開催されたのは、「優生保護法問題の政治的早期・全面解決を求める3・21院内集会」。
旧優生保護法のもと、障害者らが強制不妊手術を受けさせられていたことは知られている通りだ。厚生労働省によると、この手術を受けさせられたのは実に約2万5000人。
この手術の被害者が2018年から国を訴え始めたのだが、39人の原告は皆、高齢だ。提訴から6年、すでに6人が亡くなった。集会の冒頭では、今年2月に亡くなった熊本の原告、渡邊數美さんへ黙祷が捧げられた。
体調が悪くて病院に行った10歳の頃、なんの説明もされずに睾丸摘出手術をされた渡邊さんは以後70年、体調不良の中で過ごしてきたという。男性ホルモンが正常に分泌されず、骨粗鬆症となってしまったからだ。変形性関節炎で、少し足を引きずる程度の障害でなされてしまった残酷な手術。生涯の中で2度ほど結婚の話があったが、「断種した自分では相手を幸せにしてあげられない」と断ったという。そのことで、自殺未遂をしたこともあったと弁護団の一人は話してくれた。
ほかにも、衝撃的な話をたくさん知った。第一子を帝王切開で出産した際に、何も知らされずに不妊手術をされた聴覚障害の女性。12歳で子宮を摘出され、その後遺症で約20年、寝たきりの生活を余儀なくされた脳性麻痺の女性。両親が市役所の職員に、「障害年金を受給するためには手術を受けるしかない、望まない妊娠を防ぐためだ」と説得され、22歳で手術を受けさせられた知的障害の女性。原告の中には、障害がなかったのに、なんの説明もなく16歳で手術された女性もいれば、「非行」を理由に手術された男性もいる。こんな無法地帯があっていいのだろうか。この日、原告らは涙ながらに無念の思いを語った。もっとも聞いた言葉は、「悔しい」だった。
今年5月には、最高裁での弁論が予定されている。が、原告らは、「最高裁判決を待つことなく、すべての被害者に救済を」と訴えている。国は彼ら彼女らの声に、真摯に向き合ってほしい。
(『週刊金曜日』2024年4月5日号)