夫婦同姓制度で姓が消えていく 「2531年に日本人は全員佐藤性」の試算公表
宮本有紀・編集部|2024年4月18日4:26PM
現行の「夫婦同姓」制度を続けた場合、「2531年には、日本人は全員佐藤姓になる」というシミュレーションが公表された。分析したのは、東北大学経済学研究科高齢経済社会研究センターの吉田浩教授。同センターではさまざまな社会の影響を数値で「見える化」することで漠然とした将来の課題をわかりやすく提示。今回は選択的夫婦別姓が実現しない場合の日本がどうなるか、その影響の一例を「見える化」したものだ。
これは、選択的夫婦別姓の実現を目指す一般社団法人「あすには」の「THINK Name PROJECT」の企画で、クリエイティブ業界で働く石塚啓さんと栗原志帆さんが発案。2人は同法人の活動に共感し、プロボノ(技術や経験を生かして取り組む社会貢献活動)クリエイターとして、選択的夫婦別姓について考えるきっかけをつくるプロジェクトに取り組んでいる。
両氏と吉田教授らは東京都内で3月22日に会見。試算について説明した。まず、日本では婚姻時に「夫妻同姓」にしなければならない規定があり、最も多い姓が「佐藤」という前提から、「佐藤姓と婚姻するケースが多くなり、これを繰り返すと佐藤姓だけになるのでは?」という仮説を立てた。「名字由来net」提供データから佐藤姓の人数推移を、総務省の推計人口から毎年の総人口を入手し、比率を計算。「夫婦同姓」が続くと毎年1・0083倍の伸び率で佐藤姓が増加し、2531年に100%に達するとの結果になった。
一方、選択的夫婦別姓制度が導入されれば、同年の佐藤姓占有率は7・96%となり、100%になるのは3310年。同年の日本人人口は22人のため、少子化による日本人滅亡(3623年)まで姓の多様性はほぼ保たれるという。
石塚さんは「改姓の95%が女性に偏っている。選択的夫婦別姓は女性の中で多く語られてきたが、社会を変えるためには男性に自分ごととして考えてもらう必要がある」との思いからプロジェクトを考案したと話す。
同シミュレーションを基にした「佐藤化」体現アクションは4月1日に始動。約40社の企業が参加し、商品名やロゴを「佐藤」にするなどの試みが行なわれる。詳細はプロジェクトのサイト https://think-name.jp/ で見られる。
(『週刊金曜日』2024年4月5日号)