無意識のジェンダーバイアス 自治体の婚姻届記入例で「夫の氏」選択が約9割
宮本有紀・編集部|2024年4月18日4:37PM
婚姻届には「夫婦の氏」として夫の氏か妻の氏かを選択する欄があるが、自治体の窓口で例示する記入例で、夫の氏を選択する例が圧倒的に多いことが一般社団法人「あすには」の調査でわかった。
ジェンダー平等と選択的夫婦別姓の実現を目指す同法人は3月22日、東京都内で会見。2023年10月から24年2月まで、全国の自治体の約3割、526自治体を調べた結果を報告した。
現在の民法では婚姻時に夫か妻のどちらかの姓を選び「夫婦の氏」を決めなければならない。改姓は約95%が女性という圧倒的な差がある現状を踏まえ、窓口での例示にもジェンダーバイアス(男女の役割などへの固定的な思い込みや偏見)があるのではないかと調べたという。調査したのは「婚姻後の夫婦の氏」の選択例と婚姻する2人の年齢差、証人2人の性別。その結果、氏の選択例は472件(89・7%)が男性の氏にチェックし、妻の氏をチェックする例は4件のみ(0・8%)だった。
あすには代表理事の井田奈穂さんは「自治体の人に聞くと、どちらを選んでもいいのだから、たまたまで意識したわけではないとお
答えいただくのだが、それでも圧倒的な偏りがあるということはアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)があることをうかがわせる」と指摘。また、妻になる人の欄にだけ「氏は旧姓で記入します」などの注意書きがある例(山梨県昭和町)を挙げ、「中立的な表記ではない」と批判した。
さらに、厚生労働省の人口動態統計によれば夫妻の年齢で最も多いのは同い年だが、夫になる人が年上の記入例が442件(84%)で妻になる人が年上のものは22件(4・2%)だった。証人2人の性別(名前で推定)は男女1人ずつが264件(50・2%)、両方とも男性が206件(39・2%)、両方とも女性が14件(2・7%)。
課題はあるが、調査活動や報道の影響で自治体が事例を改善する効果が表れている。東京都中野区ではメンバーが問い合わせると「男女平等の点から公平さを欠いたものだった」とすぐに対応。兵庫県芦屋市、同県三木市、同県加西市、千葉県船橋市も改善したという。今後も全国の自治体に見直しを促すなど活動を続ける予定だ。
(『週刊金曜日』2024年4月5日号)