板橋「ハッピーロード大山商店街」一部解体、タワマン建設計画に反対デモ
長岡義幸・フリーランス記者|2024年4月24日5:25PM
東京・池袋駅から東武東上線で約6分ほどの大山駅(板橋区)の周辺の再開発をめぐり商店主や地域住民らが反対運動を展開。関東を中心に86店舗を展開する中堅のスーパーマーケットチェーン「コモディイイダ」も加わり、計画見直しを求める声が高まっている。1日に約3万5000人が行き交うなど都内でも有数の商店街として知られる「ハッピーロード大山商店街」の存亡にかかわる事態への危機感が増しているからだ。
再開発事業は、敗戦直後に立案された都市計画道路「補助26号線」を復活させ、ハッピーロードを斜めに縦断する形で通すもの。この道路の両脇に4棟のタワーマンションを建て、駅前には新たに広場を作り、東上線を高架化するという複合的な計画だ。東京都や板橋区、住友不動産ほかの事業者が関与し、2棟のタワマンが竣工間近となった。
26号線の着工はまだ先の計画だが、先行してハッピーロードの賑わいの象徴であるアーケード(全長約560メートル)の中央部分(約180メートル)の解体に着手する動きも浮上した。工事が実行されれば商店街が分断され、衰退するとして、商店主ら9人が3月22日、アーケードの所有者である商店街振興組合などに工事中止を求める仮処分を東京地裁に申請。4月12日までに二度の審尋が行なわれた。だが、9日深夜には解体工事が始まった。すでに天井の一部が撤去され、上空が見える状態になっている。
4月7日、再開発業者と行政の主導ではなく地域密着型の街づくりをと訴えてきた地域団体「大山問題を考える会」の呼びかけで「大山問題住民デモ」が行なわれた。コモディイイダ大山店前に集合、ハッピーロードを抜けて板橋区役所前まで練り歩いた約280人の参加者らは「住民の声を聞かないアーケード解体に反対!」「強制立ち退きに反対!」「タワマン再開発に反対!」「26号都道延伸に反対!」などと気勢を上げた。先頭では、地元で和菓子店を営む栗原登喜雄さん、前記「考える会」の事務局で不動産会社を経営する石田栄二さん、コモディイイダ社長の飯田武男さんの3人が横断幕を持って並んだ。
「座り込みも辞さない!」
解散地でも参加者らが口々に計画反対を訴えた。栗原さんは二転三転する計画性のなさを指摘し、アーケードの解体をめぐって説明会があったものの、質問をしても「答えがまったくなかった」と報告。デモに対しては行政が振興組合を通じて「まわりの人に迷惑をかけるからやめてくれ」と言ってきたと明かしたうえで「いきなり強行突破しようとすることに私は強く反対を申し上げる」と語った。
地元で「板橋茶論」という市民グループを主宰する立教大学教授の和田悠さんは「地域住民とコモディイイダの社員が一緒に声を上げているのがこのデモの特徴。お店が地域に愛され、地域もまたお店を愛しているということだ。しかし行政は、これらの“愛”を考えず、机の上だけ、利権だけで勝手に決めてしまう。対話を可能にするためにはファイティングポーズをとるしかない」と主張した。
コモディイイダの飯田社長は「私たちは大山商店街をいい商店街として守り続けたくて反対運動をしている。私は先頭に立って闘います」と語り、さらに「工事が始まればヘルメットをかぶって、座り込みも辞さないつもりで阻止したい。再開発事業には強制力があり、(行政側は)行政代執行もかけられる。成田空港が開港する前の三里塚(闘争)のような形になるかもしれない。(大山店が)ブルドーザーで壊されても徹底的に営業を続けていきたい、という覚悟です」と宣言した。
飯田社長は個別の取材に応えて「都民の土地、区民の土地を一部のデベロッパーと地権者の金儲けの材料にしている。それを許しちゃいけないということで立ち上がった」とも語った。
一旦立ち止まり、真摯な話し合いが行なわれることを望みたい。
(『週刊金曜日』2024年4月19日号)