島根原発2号機運転差止仮処分 日本唯一県庁所在地に立地
脱原発弁護団全国連絡会|2024年5月1日4:08PM
昨年3月10日に、島根県と鳥取県の住民らが申立てた島根原発2号機の運転差止仮処分が2月19日の審尋期日で審理終結し、3月末をもって、双方が書面提出を終えることになった。それを踏まえて、4月9日に債権者(住民)側が決定前の事前レクを行なった。
主な争点は、①島根原発の基準地震動820ガルは、実際に起きた地震と比較して低水準であり、不合理であるが、債務者(中国電力)は実質的な反論をしていない。②新規制基準では、福島原発事故の反省から断層ごく近傍の地震動について考慮することになっているが、敷地からわずか1.3キロメートルの宍道断層を考慮していない。③司法審査の枠組みとして、深層防護5層のいずれかが欠落していれば具体的危険があるとした東海第二原発水戸地裁判決の枠組みをとるべきである。④噴火規模が予測できる前提となっている火山ガイド自体が不合理で、債務者は三瓶山の大規模噴火による100センチメートル超の敷地への降灰を想定していない。⑤避難計画の前提として立地審査指針が機能していない。原発は県庁所在地に立地、30キロメートル圏内に45万人超が住んでいる。事故対応の司令塔が近くにあり、事故に巻き込まれて機能不全になる。
特に⑤の争点に関し、鳥取県米子市議会議員として、議会で住民の不安を代弁してきた債権者の土光均さんは、「再稼働に対する疑問、不安、それを裏付ける事実を裁判所に示すことができたと思っています。裁判所には疑問や不安を受け止めるような判断をしてもらい、8月にも想定されている再稼働をいったんストップさせて、この判断が2号機の再稼働の問題について、様々な立場から実のある合理的な議論の契機となることを願っています」と述べた。同じく債権者で鳥取県伯耆町在住の後藤譲さんは、「伯耆町は島根原発から40キロ、福島第一原発事故で全村避難となった飯舘村と原発から同じ程度の距離になる。しかし、避難計画が全く説明されていない。全戸配布された防災のしおりには、原発の避難計画のことが一言もない。鳥取県の定める段階的避難は到底できない。ぜひ、裁判で止めていただきたい」と訴えた。原発から11キロの距離にいる債権者の芦原康江さんは、「土砂災害警戒地域が無数にある。能登半島地震をみて市民の多くは同じような地震が起きたら、避難することはできないと思った。万が一のこと考えれば、安全に避難できない。原発は二度と動かしてほしくない。この仮処分で住民の思いを汲んでいただいて、安心して暮らせる決定を出してほしいと強く思っている」と述べた。
仮処分弁護団共同代表の妻波俊一郎弁護士は「3・11福島第一原発事故をふまえて、事実を虚心坦懐に正面から真摯に受け止めるか否かが裁判官に問われている。双方の主張を比較検討する中で、債権者らの主張の優位性、正当性、合理性は明らか。裁判官自ら考えられて、地域住民の人格権を予防的に守るために、法的に正しい判断をすることを強く求め期待している」と締めくくった。
裁判所は決定時期を明言していないが、弁護団としては、最終の書面期限が切られているので、6月決定に向けて動いているのではないかと考えている。
(『週刊金曜日』2024年4月26日・5月3日合併号)