HPVワクチン訴訟支援団体が東京都施策に反対声明 「男性への公費助成は中止を」
高波淳・フリージャーナリスト|2024年5月20日7:39PM
接種された女性たちに激しい痛みや記憶障害など、多様で重篤な副反応を引き起こしてきたHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を、男性に接種する際の費用を公費で助成する動きが各地で起きている。東京都もその一つで、4月からは都内の自治体が男性の接種費用を助成する場合、その半分を補助することにしている。
こうした動きに対し、ワクチンをめぐる集団訴訟(本誌3月8日号などで既報)の支援団体「HPVワクチン東京訴訟支援ネットワーク」が4月12日、都に反対声明を提出した。
「都が補助の方針を打ち出したことを受け、多くの自治体が公費助成を始めようとしている。しかしこれは費用対効果、リスクベネフィットバランスの両方の観点から大きな問題がある」
東京・西新宿の都議会議事堂内の談話室。支援ネットワークの隈本邦彦代表の声が響いた。この日の反対声明の提出には、集団訴訟の原告の望月瑠菜さん(25歳)や、医薬品を監視するNGO「薬害オンブズパースン会議」副代表の別府宏圀医師や支援者ら8人が同行。都からは保健医療局感染症対策部の防疫調整担当課長ら4人の担当者が出席した。参加者を代表して望月さんが、都の担当者に反対声明を手渡した。
子宮頸がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)は主に性交渉を通じて感染する。東京都保健医療局は「男性がワクチン接種による感染予防をすることで、性交渉によるHPV感染から女性を守り、子宮頸がんの予防にもつながります」とホームページでうたう。また、男性のワクチン接種により中咽頭がんなどの原因と考えられているHPVへの感染予防が期待できるとしている。
今回の反対声明は、そうした都の見解に反論し、公費助成を直ちにやめるよう要求。具体的には
◆HPVワクチンの、中咽頭がんへの予防効果は薬事承認されていない。
◆費用対効果が極めて悪いことは国立感染症研究所のファクトシートでも指摘された。
◆男性への接種が女性の子宮頸がんの予防につながるという医学的根拠はない。
◆国内で男性への接種が承認されているワクチンである「ガーダシル」は、接種後に重篤な「副反応疑い」が報告される頻度が高い。
――などと指摘する。
訴訟原告が窮状を説明
望月さんはワクチンの接種後、歩行困難などの症状に苦しんだ。昨年6月に症状が再び悪化し、パートの仕事も失った。今回は居住地の山梨県から杖をついて参加。「初めてワクチンを打ってから14年経つが、まだ体調が悪く、社会に復帰できていない」と訴えた。
都側は「HPVワクチンの男性接種については、希望される方の負担軽減を図るため、区市町村を通じて接種費用の補助をさせていただいている。都民のみなさまで希望される方には、ワクチンの効果と副反応のリスクとを踏まえたうえで、安心して接種を検討できるよう、ワクチンのことについて分かりやすい情報発信に努めてまいりたい」という趣旨のコメントを返した。
男性への接種については、すでに青森県平川市、千葉県いすみ市、東京都中野区、埼玉県熊谷市などが費用助成を実施。東京都品川区なども4月から助成を開始した。
(『週刊金曜日』2024年5月10日号)