護憲派の集会に3万2000人 「武力で平和はつくれない」
平畑玄洋・編集部|2024年5月27日7:31PM
憲法記念日の5月3日、東京都江東区の有明防災公園で「武力で平和はつくれない! とりもどそう憲法いかす政治を 2024憲法大集会」が開かれた。
護憲派の大集会は今年で10回目。昨年より約7000人多い約3万2000人(主催者発表)が参加した。5日前の衆院3補欠選挙で野党候補が全勝したことから会場には当選者らも顔を出した。
イスラエル軍の侵攻でパレスチナ自治区ガザ地区の人道危機が深刻になる中、現地で医療支援などを行なってきた整形外科医の猫塚義夫さんが大集会に駆けつけ、発言した。団長を務める北海道パレスチナ医療奉仕団を有志らと立ち上げる際、憲法前文にある平和的生存権を理念に掲げたという。
〈われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する〉
「憲法全体を規定するこの前文にこそ、私たちがパレスチナ人たちと気持ちを一つにできる論理がある」
これまで現地を14回訪れたという猫塚さんは、増え続ける死傷者数に触れながら「ガザ地区は『世界最大の天井のない監獄』と呼ばれてきたが、今や『世界最大の天井のない絶滅収容所』だ」と危機感をあらわにした。
さらにイスラエルの軍事力について「戦場で初めてAI(人工知能)を使ったのがイスラエルだ」と述べ「ハイテク軍事大国だが、(パレスチナ自治区への)弾圧を続ける中でハマスの奇襲反撃を誘発してしまった。平和を守るのに武器は必要ない」と訴えた。
「もう一つ言いたいのは人道的なことを言う一方でイスラエルに武器を供給している米国の二重外交と、それに追従する岸田文雄政権のあり方だ」と猫塚さんは語気を強め「日本はイスラエルと準同盟国のような関係にあり、ガザの問題は他人事ではない」と語った。
これを受け、司法試験指導校「伊藤塾」塾長で弁護士の伊藤真さんも「日本の憲法は全世界のことを考え、人々が恐怖と欠乏を免れ、平和のうちに生きることができるよう頑張りますと謳っている。私たちはその使命、責任、役割を果たさなければいけない」と続けた。
安倍政権“負の遺産”今も
秘密保護法対策弁護団事務局長で弁護士の海渡双葉さんは、国会で審議中の経済秘密保護法案(重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案=10日可決)の問題点を挙げた。保護の対象となる秘密情報について、海渡さんは「概念が曖昧で大幅に秘密指定されるのは自明」と指摘。秘密情報の取り扱いを民間人を含む有資格者に限定する「セキュリティ・クリアランス」(適性評価)制度の導入についても、身辺調査の範囲が薬の服用や飲酒のほか、性的な交友関係にまで及ぶ恐れがあるとして「非常に広範で人権侵害ではないか」と懸念を示した。
罰則規定にも触れ、大川原化工機事件を例に挙げ「経済安保の名のもとに冤罪事件が実際に起きている。『経済安保版秘密保護法案』が通ってしまえばとんでもないことになる」と言い、反対の声を上げようと来場者に呼び掛けた。
群馬県からは「『記憶 反省 そして友好』の追悼碑を守る会」共同代表の川口正昭さんが参加した。県の代執行で撤去された碑は、2001年に県議会で自民党を含む全会一致で採択された請願を受け、04年に建てられた。ところが請願から10年あまり経つと今度は「碑文が反日的だ」などと県に抗議が届くようになり「撤去に傾くようになった」という。
川口さんはその背景に、12年末からの第2次安倍晋三政権以降における歴史修正の動きがあったと指摘。「地方議員も自分の頭で考えなくなり、人々を敵味方に分け、敵には耳を貸さないという安倍政権の政治姿勢と同じになった」と振り返った。碑の設置不許可を「適法」とした裁判所に対しても「憲法と法律にのみ拘束されると、憲法76条に規定されている裁判官が、政府の考えを忖度して驚くような判決を出す機関になった」と苦言を呈した。
(『週刊金曜日』2024年5月17日号)