佐賀県玄海町が「核のごみ」処分場の文献調査受け入れ
佐藤和雄・「脱原発をめざす首長会議」事務局長|2024年5月27日7:40PM
九州電力の玄海原子力発電所が立地する佐賀県玄海町が、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分の第一段階である文献調査を受け入れた。原発立地自治体内での文献調査は初めてとなる異例のケースだ。まず町議会が4月下旬に文献調査受け入れを求める請願を採択。さらに議会の動きを受けて経済産業省は5月1日、脇山伸太郎町長に受け入れを申し入れ、7日には齋藤健大臣が面談し、重ねての説得を試みていた。脇山町長は苦悩をにじませながら10日、町議会全員協議会で受け入れの方針を伝えた。
文献調査は2020年10月に、北海道の寿都町が正式応募し、神恵内村が国からの申し入れを受諾。すでに調査は終わり、現在報告書案が経産省の総合資源エネルギー調査会の地層処分技術ワーキンググループで審議されている。
この2自治体と比べて玄海町が「異例」という印象を与えるのには、二つの理由がある。第一に、文献調査を受け入れれば、原発が立地する場所で、核のごみの最終処分場の建設の可能性が公式に探られることになるからだ。
第二は、経産省が作成した最終処分場にふさわしい地域かどうかを示す「科学的特性マップ」では、玄海町は鉱物資源の分布から全域が「好ましくない特性があると推定される」場所なのだ。マップでは町全体がグレーの色。「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」とされるグリーン色の地域とは明らかに異なる。
「核のごみ」表現への怒り
なぜ、こうした状況に至ったのか。始まりは、昨年11月に資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO)が実施した玄海町での対話型説明会である。
NUMO関係者によれば、この説明会は町側から求められたものではない。NUMOなどが最終処分問題への理解を広げるために全国で実施している対話型説明会の場所を選定する際、「町議会で(文献調査について)質問が出ていたので、関心が高いのではないかと考え、やることにした」という。
脇山町長は昨年12月の町議会の一般質問では「文献調査を行なうという考えはない」と述べたが、町内で原発関連の仕事や従業員に関係する業界は、請願を提出することにした。かつては九州電力の原発4基が動いていたが、現在は2基に半減。作業員の数は減り、それがビジネスに痛手を与えているからだ。対話型説明会は、ほぼ同じ思いを持つ旅館組合、飲食業組合、建設業界が請願を提出する動きにつながったのである。
玄海町が原発立地自治体としての長い歴史があり、町議員らの意識を変えてきたことも今回の請願採択の背景にあるのだろう。たとえば4月25日の町議会原子力対策特別委員会の冒頭、岩下孝嗣委員長は報道陣にこう述べたのである。
「最近新聞記事等で見受けられる『核のごみ』という表現についてはいかがなものか。正確には高レベル放射性廃棄物、もしくは特定放射性廃棄物と表現するべきではないか。表現の自由とは言え、『要らなくなったらゴミ』という表現の仕方は改めて頂きたい」
(『週刊金曜日』2024年5月17日号)