日本の核禁条約参加を目指してキャンペーン発足 「被爆国の参加で世界は変わる」
竪場勝司・ライター|2024年5月27日7:53PM
唯一の戦争被爆国である日本の核兵器禁止条約(核禁条約)への参加を目指す一般社団法人「核兵器をなくす日本キャンペーン」が4月1日に発足。20日に東京・港区の明治学院大学で記念シンポジウムが開かれた。キャンペーンでは2030年までの条約への参加を目標に、日本政府への働きかけを強めるとともに、市民向けの学習会や国際会議など、核兵器廃絶に向けたさまざまな取り組みを展開していくことにしている。
核禁条約は被爆者や世界の市民の声を受けて作られた条約で、17年に国連で採択され、21年に発効した。署名国は93カ国(24年4月現在)。日本政府はアメリカの「核の傘」の下にある現状などを理由に条約への参加には否定的で、市民社会から要望の強かった、同条約の締約国会議へのオブザーバー参加も見送ってきた。
キャンペーンの母体となったのは、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)や核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)、ピースボート、日本反核法律家協会など約30の団体や個人でつくる「核兵器廃絶日本NGO連絡会」だ。これまでも年に数回にわたる外務省との核政策に関する協議、各政党の代表を集めた核兵器政策に関する討論会(毎年8月に広島で開催)、国連が定めた「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」(9月26日)の記念イベントなどの活動を行なってきた。ただ、これらの活動は「ゆるやかな集まり」として展開してきたが「日本の核禁条約への参加を実現していくために、もっと強力な運動をしていく仕組みが必要だ」との声が出たことを受け、22年10月ごろから議論を重ねた結果、新しくキャンペーンを発足させる方針が決まった。
今回のシンポジウムでは冒頭、キャンペーン代表理事に就任した日本被団協代表委員の田中熙巳さんが「超党派で思想信条を問わず、核兵器をなくす目的のもと、力を合わせてやっていこう」と訴えるビデオメッセージが紹介された。
続いてキャンペーン専務理事でピースボート共同代表の川崎哲さんが発足に至った経緯を説明。「日本は核兵器廃絶のための活動をしている団体が世界で一番多い国。これだけ多くの人が活動しているのだから、うまく連携すれば絶対に力になるはずだ」として、実際に今回の旗揚げが、そうした話し合いや人々の支援の積み重ねの上にこそ成り立ったものであることを強調した。
さらに「被爆国である日本が条約に参加することで、この条約はもっと強くなり世界は変わる。核保有国や『核の傘』の下にある国にも大きな影響を与えていく」と、日本が核禁条約に参加することの意義を説いた。
来年は国際市民会議開催
シンポジウムでは他に、中東など世界各地を取材しているフォトジャーナリストの安田菜津紀さんが、「終わらない戦禍、それでも核なき世界を目指すには」というテーマで基調講演。国連事務次長の中満泉さんや、カナダ在住の被爆者、サーロー節子さんからのビデオメッセージも紹介された。終盤ではキャンペーンの活動の中心を担っていく広島や長崎などの団体の関係者が登壇。「核兵器をなくす日本キャンペーンのこれから」とのテーマでクロストークを行ない、どんな活動が必要かなどについて意見を交わした。
キャンペーンでは当面「政府への働きかけ」と「市民への働きかけ」を活動の二本柱とする。今後はすべての政党の国会議員への訪問活動などに取り組む。被爆80年となる2025年には、日本の市民団体を主体に、日本政府や議員、諸外国の外交官などが一堂に会する「核兵器の非人道性に関する国際市民会議」(仮称)を日本で開催。同年3月の第3回核禁条約締約国会議と連動して核廃絶の運動を盛り上げていく方針だ。
なお、キャンペーンでは活動を寄付によって支える「マンスリーサポーター」(月額1000円から)や「年間サポーター」(年額1万円から。詳細は公式サイト https://nuclearabolitionjpn.com/#donate参照)を募集している。
(『週刊金曜日』2024年5月17日号)