小池都政8年に「市民と野党共闘」の蓮舫氏が挑む 「古い政治との決別を」
畠山理仁・フリーランスライター|2024年6月11日5:24PM
「反自民党政治、非小池都政。私は東京都知事選にこの姿勢で臨みたい。古い政治と決別して、本当に必要な政策に予算を振り向ける。この8年間を都民に問わせていただきたい。小池都政をリセットする」
5月27日午後、立憲民主党の蓮舫参院議員(東京都選挙区)が党本部で記者会見を開き、首都決戦への参入を正式に表明した。蓮舫氏が掲げるのは、これまで築かれてきた「市民と野党の共闘」をベースとした「オール東京」だ。
この日の会見場に集まった報道陣は約120人。記者からは「党本部にこんなに報道陣が集まるのは久しぶり」との声も漏れたが、注目が集まるのも無理はない。「小池一強で無風」と言われていた都知事選に、元行政刷新担当大臣で全国的な知名度もある蓮舫氏が突如として名乗りを上げたからだ。
東京都知事選で勝つために必要なのは、やはり「知名度」だ。蓮舫氏の出馬表明は、都民だけでなく、自民党が牛耳ってきた国政政界と日本社会に大きなインパクトを与えている。
なぜ今回、決断したか?
これまでも、東京都知事選が近づくたび、蓮舫氏の名前は「候補の候補」として何度も挙がっていた。しかし、いつも立ち消えになっていた。東京都選挙区の参院議員である蓮舫氏が出馬すれば、野党の大物論客の議席が一つ空席になる。補欠選挙も来年まで行なわれない。それにもかかわらず、なぜ今回は出馬にいたったのか。
「国政での私の立ち位置、あるいは行政監視の役割から見て、今の自民党政治は看過しがたい。この思いが一番強いところにある。ただ、国としては、まだ見通せませんけれども、政治とカネの行政改革、政治改革は、これから与野党協議を経て、国民が最も厳しく注視している中で進んでいくことになると思います」
蓮舫氏はそう述べた上で、都知事選挑戦の理由をこう続けた。
「だけれども、足元の首都・東京、参院東京選挙区の私からしてみたら、実は東京にも行財政改革しなければいけない、もっともっと予算の見直しをしなければいけないところを見つけた。東京だけが改革から遅れては、いけない。今回、都知事になって都政から変えたい。それが結果として国政にも影響が出るような政策を実現していきたいと思ったことが大きな理由です」
東京都の予算規模は一般会計で8兆4530億円。特別会計も含めると16兆5584億円。北欧諸国一国にも匹敵する大都市だ。約1410万人が暮らす東京で変化が起きれば、全国に影響が及ぶ。
蓮舫氏が出馬を決断したのは、最近の選挙で野党系の候補者が連勝していることも、もちろん影響している。4月末に行なわれた衆院議員の3補選(長崎3区、島根1区、東京15区)では、野党共闘により立憲民主党系の候補者が3勝した。また、5月26日投開票の静岡県知事選でも野党候補が勝利した。
しかし、それでも国政は変わらない。一方で、都知事であれば、今必要な政策を強力なリーダーシップで実現できる。国政野党として味わう歯がゆさが今回の決断に影響しているのは間違いない。
小池都政への問題意識
蓮舫氏は5月末時点では、具体的な公約について「後ほど日を改めてお伝えする」と述べている。が、問題意識の一端は、出馬会見での発言から伝わってくる。小池氏が初めて出馬した2016年の都知事選において、同氏が掲げた「7つのゼロ」公約について、「どこに行ったんでしょうか?」と問いかけたのだ。
介護離職、残業、都道電柱、多摩格差、満員電車、待機児童などをゼロにするという公約を「どれもゼロにはなっていません」と指摘。小池氏が推進してきた事業についても厳しく批判した。
「去年、突然、18歳以下のお子さんに月5000円を支給する。選挙の前の年に決め、選挙の年にもお金が支給される。今年2月、突然、都庁の外壁のプロジェクションマッピング(2年間で48億円)が始まった。知事選の5カ月前から、こうしたことで都知事の露出度が高まっています」
8年ぶりにリニューアルされ、昨年11月から今年3月末までに東京都の全戸770万戸に配布された「東京防災ブック」についても疑問を投げかけた。一つひとつに小池都知事の顔写真が入ったメッセージが添付されていたのだ。
「この予算は8年前より11億円増えています」
同じく俎上に載せた都の防災ポスターにも知事の顔写真と直筆メッセージ、サインが入っていた。
「これを張った町会には防災グッズ補助金が出ました。対象は東京都の3000の町会。予算は8・5億円。公金を使った事前の選挙活動と思えてしまうのは私だけではないと思っています」
蓮舫氏はこうした予算を見直して、別のものに振り向けたいという。
「格差で光が当たらない、困っている人たちに、私は政策を届けたい。仕事を、食べ物を、安心を、子どもたちには教育の充実を届ける」と強調した。