京都府が1万人収容アリーナ建設を断念 「府立植物園は守られた!」
土岐直彦・ジャーナリスト|2024年6月18日7:55PM
京都府立植物園(京都市左京区)と隣接の府立大学キャンパスを、商業性を帯びた「賑わい空間」に改変する整備計画(本誌2021年7月2日号既報)について京都府は今年3月、メインの1万人規模収容の大規模アリーナ建設の断念を表明。計画は事実上頓挫した。同計画への17万筆を超す反対署名運動や街頭宣伝を3年余にわたり展開してきた市民、学者・学生による住民団体は、これを自らの声が行政を動かした結果と捉え5月25日、「植物園は守られた!!」として報告集会を同市内で開いた。
府が府立植物園一帯の整備計画を公表したのは20年12月。同植物園や府立大との境界をオープンにすると同時に賑わい・回遊空間を開設。植物園は都市公園化のうえ周囲には商業施設やレストラン・ホテルを設け、府立大キャンパスには商業的アリーナを建設するという大規模な計画だった。これを「無謀な計画」だとして5団体・組織が立ち上がり、植物園、府立大や周辺の住環境を守れと訴える共同活動を展開。署名は全国に拡大し、街頭宣伝(120回余)のほかデモや京都府・京都市への要請行動、府民大集会、学会報告など多様な活動に取り組んできた。
こうした運動の結果、府は昨年2月には植物園整備計画の大幅な見直し案を提示し、当初案からは「イベント活用スペース」「賑わい・交流施設」などが削除された。建設中止を求める声が府立大内にも広がったアリーナについても、最終的に府内の別の場所に定員8000席強で造ることになった。
住民団体は「神宮外苑(東京)など全国で公共の森を壊す計画が相次ぐ中、大きな成果だ」とする。地域住民中心の「京都府立植物園整備計画の見直しを求める会」共同代表の都築澄子さんは「行政を動かしたのは住民だけでなく植物園の元園長や研究者、府立大生などからの幅広い声。森を守る全国的な運動の一翼を担えた」と話す。
(『週刊金曜日』2024年6月7日号)