飯塚事件、福岡地裁が2度目の再審請求を棄却
佐藤和雄・ジャーナリスト|2024年7月4日4:33PM
福岡県飯塚市で1992年2月、小学校1年生の女児2人が連れ去られ、殺害された「飯塚事件」で、福岡地裁(鈴嶋晋一裁判長)は6月5日、死刑が執行された久間三千年・元死刑囚(死刑執行時70歳)の遺族による2度目の再審請求を棄却する決定を出した。
同事件をテーマに一昨年4月にNHK BSで放送され、文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞を受賞した「正義の行方~飯塚事件 30年後の迷宮~」が今年4月から劇場版(木寺一孝監督)として公開されたこともあり、結果が注目されていた。
筆者は福岡地裁が示した決定要旨24ページを精読したが、その判断は弁護団の主張をまったく認めない、極めて厳しい内容だった。
今回、弁護団が新証拠の中核として出したのは、女性のA氏と木村泰治氏の2人の証言である。
まずA氏は、女児2人が連れ去られる直前に2人を目撃したとの証言をしたとされていたが、第2次請求審では「捜査機関が無理やり記憶とは異なる供述調書を作成した」と証言。これに対して福岡地裁は「事件発生から30年以上もの長い年月が流れ、事件当時の記憶が相当程度風化し、不確かなものとなってしまっていると考えざるを得ない」と判断し、真実を伝えようとしたA氏の証言を一切認めなかったのである。
弁護団は即時抗告
弁護団が新証拠としたもう一つが、事件の報道を見て名乗り出た木村泰治氏の証言だ。木村氏は事件当日の午前、飯塚市方面から福岡市方面に車で通行中、時速40キロ未満で走る白のライトバンを右方から追い越した。その際に車内に小学生の女の子2人が乗っており、運転手は「坊主頭で、色白の小柄な男であり、年齢は35歳前後に見えた」と述べ、久間氏とはまったくの別人だったことを証言した。
しかし、福岡地裁はこの証言に対しても「車で追い越しざまに目撃した面識のない女の子2名の顔をはっきり覚えているという供述内容自体、不自然な感が否めない」などと指摘したうえで、「供述は信用性に乏しく、特に、顔貌が被害者両名に似ているなどと述べる詳細部分は到底信用し難い」と、結論づけたのである。
弁護団の徳田靖之弁護士は「(証言に立った)おふたりは久間さんとは何の関係もなく、黙っていれば何の苦労もないのに、さまざまな困難を乗り越え法廷に立つ決断をした人たちです。その人たちが曖昧なことや、信用できないことを言うと判断すること自体が、人間としての誠意と良心に基づいてした行動を侮辱している判断だと思います」と筆者に語った。
6月10日に福岡高裁に即時抗告するという。
(『週刊金曜日』2024年6月14日号)