「改悪入管法の過酷な現実」雨宮処凛
雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員|2024年7月4日4:37PM
「入管法は廃止一択!」「永住資格の取り消し反対!」「強制送還、人権侵害!」「長期収容、人権侵害!」「入管職員、暴力やめろ!」「難民移民に、在留資格!」
6月8日、東京・渋谷の街にそんなコールが響き渡った。
この日開催されたのは、「STOP改悪入管法デモ」。昨年6月、多くの人の反対の声を押し切って成立した改正入管法が2日後から施行されることを受けてのデモだ。
集合場所の神宮通公園に行くと、ミョーチョーチョーさんが「来てくれたんですね!」と駆け寄ってきた。ミャンマーで民主化活動をしてきた彼は、軍が迫害の対象としてきたイスラム系少数民族のロヒンギャでもある。何度も逮捕や拷問を経験した果てに2006年に来日、難民申請。これまで三度申請したが、今も難民と認められていない。今回の法改正では、ミョーさんのような人が強制送還の対象になりえてしまう。これまでは難民申請中であれば送還されることはなかったが、法改正は三度以上申請している人の送還を可能にしたからだ。
そんな施行が2日後に迫っていることを受け、ミョーさんは「不安で眠れない日もある」と口にした。ミョーさん自身はつい最近、「緊急避難措置」として在留資格が出たものの、それ以前は2カ月半、在留資格がない状態に置かれていたという。
「強制送還されるくらいなら自殺する」
法改正を受けて、ミョーさんが何度か口にした言葉だ。
これだけでも酷いのに、国会ではさらなる改悪が進んでいる。税金の滞納などを理由とした永住資格取り消しの入管法改悪案だ。本誌6月14日号の「風速計」で崔善愛氏が永住資格を奪われた14年間について書いており、その過酷さに驚愕した。
一方、10日に施行された入管法には「監理措置」という制度が盛り込まれ、これが新たな貧困ビジネスの温床になるのではと懸念されている。長期収容の解決策とされるが、入管が監理人を選定し、外国人が働いていないかなどを監視させるのだ。が、監理人の下、搾取が起きるのではと指摘されている。「強制送還か収容か」を迫れば言うことを聞かせられる相手となるからだ。
午後2時、デモ隊は「帰されたら、殺される」という横断幕とともに公園を出発した。まずはこのような現実を、多くの人に知ってほしい。
(『週刊金曜日』2024年6月21日号)