【タグ】GGGI|ジェンダー・ギャップ指数|男女格差
日本は男女格差指数118位 女性閣僚増で微上昇も政治分野格差に大課題
三浦美和子・「生活ニュースコモンズ」記者|2024年7月4日4:49PM
世界経済フォーラムが6月12日、各国の男女格差を示す報告書「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数(GGGI)2024」を発表した。日本は政治と経済分野の格差が影を落とし、総合で146カ国中118位と引き続き低迷。G7(主要7カ国)で最下位、近隣の中国(106位)と韓国(94位)にも後れを取っている。
GGGIの発表が始まった2006年以来、過去最低の125位だった昨年より順位を上げたのは女性の閣僚が過去最多に並ぶ5人になったためだ。しかし政治分野の順位が多少上がったとはいえ、数値は0・118と低いままで、評価できるとは言い難い。
政治学者の三浦まり・上智大学教授は「日本で閣僚20人のうち5人を女性にするのは大変なことだが、それでも順位はわずかしか上がらなかった。逆に言うとそれくらいではだめだということ」と指摘。「女性リーダーを増やそうとかけ声をかけても、人の育成なので20年、30年はかかる。日本は大学の進学率でも女性が男性を超えていないが、米国は1980年代、欧州は90年代に超えており、日本は欧米と50年くらい差があると認識しなければならない。そして50年の遅れは、1、2年で取り戻せるものではない。それを自覚して結果が出るようにスピードアップさせる。そのための定期的な通信簿ととらえたい」と話す。
まずは「遅れている」という現実を確認する。そこからやるべきことは山ほどある、と三浦教授。「(指数には表れない)何百もの取り組みをいろいろなところで進めていかなければいけない。すぐに変化が表れるものでないのはもどかしいけれど、学校や職場、地域社会などあらゆる場所ですべての人が、男女が対等になるよう動かなければ変わらない」と訴える。
筆者が住む秋田県では今年1月、女性議員たちが「秋田県女性議員ネットワーク」を立ち上げた。女性議員が増えない理由を構造的な問題ととらえ、地域や党派を超えて連帯する取り組みだ。そこでは女性議員から「選挙で誹謗中傷を受けた。痛みを当たり前に痛いと言える人こそ必要なのに、議員は鋼のメンタルにならなければいけないのだろうか」「議会で違和感を感じたことにおかしいと声を上げたら『もっと勉強してから言ってください』と男性議員から圧を受けた」などの声を聞いた。
県内の選挙ではいまだ強固な年功序列や地盤がものをいうのだ。
打開策は女性たちの連帯
同ネットワーク呼びかけ人の一人で県議の櫻田憂子さんは「壁を割って入っていくには相当な精神力が要る。そういうマッチョな政治や選挙の仕組みそのものを変えて、さまざまな人がチャレンジできる土壌が必要」と話す。
三浦教授は、地方政治の状況について「二極化している」と語る。女性議員や女性のリーダーが多い都市部の議会がある一方、秋田県のように女性議員(県議と市町村議)の割合が全体の約11%(2023年10月時点)とパリテ(男女同数)には遠い自治体もある。女性ゼロの議会もまだ残る。
三浦教授は「地域ごとに実情は異なるので、平均値で見るのではなく、個別の対策を取らなければいけない」とした上で「人口減少という危機感をバネにどこまで地域が変われるか、どれだけ開放的になっていけるかというときに、男性だけで決める組織や地域に未来はない。女性議員が生まれやすい地域は、移住者など幅広い住民に対しても開かれている。女性だけではなく、たとえば小学生の声など多様な意見を反映させるような仕組みを考えていかなければいけない」と提言した。
また、声を上げた女性たちが孤立しないために、三浦教授は女性同士のネットワークが必要だと説く。「地方議会で女性は長く異分子だった。『男性化』するのではなく『男性のアシスタント』になるのでもなく、女性たちが束になってはね返していくために、議員同士だけでなく地域の女性たち、あるいは地域を超えた女性たちとつながっていくことが力になる。どの社会でも、女性たちは連帯して声を上げてきたのだから」
GGGIの報告書は、世界の状況について「完全な男女平等を実現するまでに134年かかる」と記す。道のりは長い。
(『週刊金曜日』2024年6月21日号)
【タグ】GGGI|ジェンダー・ギャップ指数|男女格差