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「もしゆり」の恐怖

田中優子・『週刊金曜日』編集委員|2024年7月5日4:24PM

田中優子・『週刊金曜日』編集委員。

 6月12日に小池百合子氏が東京都知事選への立候補を表明した。囲み会見をご覧になっただろうか。「(同氏の父と親しかった実業家で、学歴詐称疑惑に関して11日に記者会見した)朝堂院大覚さんが」という言葉が聞こえた途端に「すいません、ありがとうございます」と言って会見を打ち切り、場を去ろうとした。そこにテレビ朝日の記者が「なぜ今日は勝負服のカラーではないのか」と、どうでもいい質問で助け舟を出した。その言葉に安心したのか、笑いながら「メリハリつけた対応です」と意味のわからない答えをして、次の質問が来ないうちに会見場から逃げ出した。この記者は、有権者にまともな判断をさせない役割を果たした。

「もしトラ」ならぬ「もしゆり」の恐怖がその時から始まった。

 最大の懸念は、東京都の「大規模再開発」が止まらなくなることだ。2021年12月から23年12月までにユネスコの諮問機関「イコモス」より明治神宮外苑再開発計画に関する提案、要請、調査資料、アラート(警告)が約15回出された。その中には、イコモスが行なった樹木の詳細な調査報告もあり、東京都環境影響評価審議会の評価の虚偽や誤謬の指摘もある。これらに対応することなく、都知事は認可した。この次には築地の再開発が控えている。どちらにも三井不動産が関わっている。

 東京がニューヨークやロンドンやパリ等世界の諸都市に比べ、一人当たりの緑地面積や公園面積がきわめて少ないことは、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」(https://gunkakuyuhantai.awe.jp/)の都知事選メッセージでも指摘した。ニューヨーク市が07年から植樹を開始し、その他の都市もそれに続いていることは、坂本龍一さんの小池知事宛ての手紙でも指摘されている。小池都政は世界の都市が理想とする目標とは逆の方向に走っているのだ。記者がスーツの色を聞くのであれば、「グリーンという理想を次期都政では捨てるという意思表示なのでしょうか」と聞くべきであった。

 政治家の嘘は政治の嘘に繋がる。このことを私たちは、この間の国政で嫌というほど見た。嘘つきの政治家であることを知った上でその人に投票したのなら、政治家はそれを「あなたの嘘を許す」というメッセージとして受け取る。そして今度は、都政を都合の良い方向に持っていくために、数々の嘘と隠蔽を繰り返すだろう。

(『週刊金曜日』2024年6月28日号)

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