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差別発言問題で「むのたけじ賞」終了 地域・民衆ジャーナリズム賞は再出発

岩本太郎・編集部|2024年7月16日4:12PM

「地域・民衆ジャーナリズム賞2024」の授与の集いが6月15日に東京・千代田区の日本プレスセンターで開かれた。

 同賞は、昨年まで5回にわたり毎年行なわれてきた「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」に代わるものだ。戦争報道への反省から、生涯にわたり反戦・平和を訴え続けたジャーナリスト、むのたけじ氏(2016年に101歳で死去)にちなんで、名称の通り地域に根ざした優れた報道を表彰することを目的として18年に創設され、本誌でも昨年3月10日号の本欄などで選考結果を報じた。

東京・千代田区の日本プレスセンター大会議室で開かれた「授与の集い」に出席した受賞者各氏。(撮影/岩本太郎)

 ところが昨年6月、前回の受賞者より送られてきた一通の手紙を発端に事態が急変した。そこにはむの氏が生前の1979年、ある講演会で語った内容に、障害者の出産に対しての差別発言があったことが指摘されていたのだ。同賞実行委員会はこれを受けて対応を協議。その結果、共同代表として同賞の選考にも携わっていた4人(落合恵子さん、鎌田慧さん、佐高信さん、永田浩三さん)は同賞を終了すると昨年12月24日に発表。だがその時点ですでに6回目となるはずだった24年の応募作品が多数寄せられており、地域・民衆ジャーナリズムを顕彰する意義は残されていると考えた実行委は、賞の名称を変更したうえで存続することを、5月31日の記者会見で発表していた。

 問題とされた差別発言の具体的な内容、その後の経緯については公式発表を参照されたいが、15日の授与の集いの冒頭、あいさつに立った実行委の武内暁事務局長は「今回の問題を受け、改めて差別問題、地域・民衆ジャーナリズムのあり方について深く考え、今後につなげたいと考えた」と強調。共同代表の4人が辞任したこともあり、今回は従来設定されていた「大賞」や「優秀賞」は設けず、事務局のスタッフが選んだ10作品の受賞者に自ら授与するという、手作り感の強い「集い」となった。

受賞者の多様な顔触れ

 今回の受賞作品は以下の通り。

(当日表彰順・敬称略)

①首都圏の綻び ~記者が出会った識者と考察~(長竹孝夫=元『東京新聞』編集委員)

②映像23 双葉に暮らす ~故郷をつなぐ在日コリアン建築士~(伊佐治整=毎日放送報道情報局)

③こんな人たち ~自治体と住民運動(佐々木健悦)

④村の戦争/ニュースを問う兵士目線の従軍記(小松田健一=『東京新聞』前橋支局長)

⑤ミア・コーロ ~自由学校MIAKORO12号~(多文化共生フォーラム奈良)

⑥KBS京都アクセスクラブ企画制作ラジオ ~Listen to my friends~(久米村直子のスーパーデューパーサンデー)

⑦2020年グループZAZA連続講座/丁章さん講演録 ~無国籍の在日サラムを生きるとは~(井前弘幸=グループZAZA)

⑧いじめの聖域 ~キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録~(石川陽一=ジャーナリスト)

⑨屋久島町政をめぐる一連の調査報道/町長交際費・補助金不正請求など(鹿島幹男、武田剛=市民メディア「屋久島ポスト」)

⑩改めて、地域、住民目線で「医師不足」を考える(鹿角の医療と福祉を考える市民町民の会)

 授賞式後には第3回「むの賞」の受賞者で『新聞うずみ火』代表の矢野宏さんによる記念講演も。受賞者はマスメディアで活躍するプロのジャーナリストや、ネットなどを用いて地域発の独自情報を発信する市民などプロフィルは多様。⑥は1991年の「KBSイトマン事件」をきっかけに市民に開かれた放送枠として始まった番組の企画、⑨は元『朝日新聞』記者も移住先でノウハウを生かしつつ活躍するネットメディアだ。③⑤⑩については欠席だったが、他の7受賞者は出席。「むのさんの名は冠から外れても『たいまつ精神』は継承するとのこと。素晴らしい賞を頂くことができて光栄」(①の長竹さん)など、喜びを語っていた。

 同賞は次回を第7回とせず「2025」と末尾に記し、9月に発足集会のうえ募集開始の予定だ。

(『週刊金曜日』2024年6月28日号)

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