「つばさの党」選挙妨害めぐり「北海道警察ヤジ排除訴訟」弁護団がマスコミ報道に意見
徃住嘉文・報道人|2024年7月16日4:50PM
安倍晋三首相(当時)へのヤジを認めた判決によって警察が萎縮したことが「つばさの党」の選挙妨害へとつながったのではないか――。『読売新聞』の5月10日付社説やSNSなどで最近見られるそんな言説は誤りであるとして、「北海道警察(道警)ヤジ排除訴訟」の弁護団が「マスコミ報道に対する意見」を6月17日に発表した。
2019年の参議院選挙の際、札幌市で街頭演説中の安倍首相に市民2人が「安倍辞めろ」とヤジった事件は、警察が警察官職務執行法(警職法)を根拠に2人が「ヤジに憤る周囲から暴行を受ける危険があった」「周囲に暴力をふるう恐れがあった」と排除を正当化。これに対し2人が「そうした危険、恐れはなかった」として国家賠償を求めた裁判で、札幌地裁判決(22年3月)は2人の、札幌高裁判決(23年6月)は1人の請求のみを認め、原告・被告双方が上告中だ。
「意見」で弁護団は両判決が警職法の2要件を満たさない排除を違法としており公職選挙法の選挙の自由妨害は争点になっていないと指摘。他候補への選挙妨害を問われた「つばさの党」とは本質的に行為、要件が異なるにもかかわらずマスコミは両事案を結びつけているとし、同党代表が出馬の意向を表明している東京都知事選挙でも同様の報道が行なわれることへの危惧を表明。是正を求めた。
これを受けて筆者が『読売新聞』に取材を申し込むと「個別の記事の質問には答えない。同列には論じていない」(広報部)との回答。一方、テレビ朝日は17日放送「羽鳥慎一モーニングショー」で玉川徹氏がヤジ排除とは「本質的にまったく違う」と解説していた。
ヤジ排除事件当時、ビラを持っていただけの多くの市民も警察から妨害されたが、2日後に『朝日新聞』が特報するまで新聞・テレビは問題視しなかった経緯もある。メディアの責任は大きい。
(『週刊金曜日』2024年6月28日号)