選択的夫婦別姓の導入提言 多様性は企業の存続に不可欠と経団連が説明
山田道子・ライター|2024年7月16日5:07PM
経団連は6月10日、選択的夫婦別姓制度の導入を求める提言を公表。政府に対し、制度導入の民法の改正案を、国会に「一刻も早く提出」するよう要望した。6月20日には魚谷雅彦・経団連ダイバーシティ推進委員長(資生堂会長)が日本記者クラブで会見し、提言の背景などについて説明した。
魚谷氏は、企業は「社会の公器」であり、経済価値を追求するとともに社会的責任を果たすことが不可欠と指摘。「DEI(多様性、公正性、包括性)」の推進がとりわけ企業の存続に重要になっているとし、選択的夫婦別姓制度は、多様性という価値観のために不可欠だと主張した。また、旧姓で予約した海外ホテルに戸籍名のパスポートを見せると泊まれない、論文や特許取得に戸籍名が必須な研究者は、キャリアの分断が生じるなど旧姓の通称使用の弊害例も紹介。現在、改姓するのは約95%が女性であることから「改姓による不利益・不都合は女性への『間接差別』に当たる」とした。
夫婦同姓とする民法などの規定を最高裁が「合憲」と判断した2015年当時の経団連会長は「旧姓使用で不自由はない」とし、民法改正は不要との立場を示していた。会見で「(選択的夫婦別姓導入提言が)なぜ今なのか。遅くないか」と問われた魚谷氏は「これ以上先送りできない。DEIに取り組まないと競争力を失うという強い危機感がある」と答えた。
ただ、結婚で改姓を強要される制度は、経団連の提言にある「企業にとってビジネス上のリスク」というより、まず人権問題だ。そのため「企業の弱体化を防ぐためではなく、人権問題、男女平等を高めたいという意識はあるのか」との質問も。魚谷氏は「企業成長のため、と受け取られたら私の期待とずれている。人権を含め働く女性の環境を改善することが企業の責務」と答えた。大口献金元である経団連の提言を受け、自民党は選択的夫婦別姓制度を議論するワーキングチームを再開させる。
(『週刊金曜日』2024年7月5日号)