沖縄で米軍人による性暴力事件続発 市民ら嘉手納基地前で「フラワーデモ」
下地由実子・ライター|2024年7月25日4:42PM
沖縄に駐留する米軍人による少女らへの性的暴行事件が相次いで明らかになり、性暴力の根絶を訴えているグループ「フラワーデモ in KOZA」が6月28日、被告の一人が所属する米軍嘉手納基地(沖縄市など)の第2ゲート前やコザゲート通りで集会を開いた。
SNSの呼びかけに応じ、約100人が参加。黄色やピンクと彩り豊かな花を掲げて被害者に思いを寄せるとともに、事件の有効な再発防止策を打たないばかりか、半年も公表しなかった日米両政府や米軍に怒りと不信の声を上げた。
コザゲート通りは、第2ゲートを起点とする沖縄市の中心市街地にあるメインストリート。レストランやミュージックバーが立ち並び、米軍関係者も多く行き交う。
参加した人たちは「Give back Our girl,s Dignity(私たちの少女の尊厳を返して)」「NO RAPE! NO BASE!」などのボードを掲げて抗議した。主催者の女性は「頻発する犯罪に黙っていられない。腹の底からマグマが燃え上がるような思い」と訴えた。
岸田文雄首相が沖縄を訪れ、基地の集中について「重く受け止め、負担軽減に全力を尽くす」とあいさつした6月23日の「慰霊の日」から始まった1週間。皮肉にも、在沖米軍人の性的暴行事件が3件も発覚し、沖縄にかかる異常な基地の重圧が改めて浮かび上がった。
まず、25日。嘉手納基地所属の空軍兵が昨年12月、16歳未満の少女をわいせつ目的で誘拐、暴行したとして今年3月に起訴されていたと報道された。3日後のデモ当日には、5月に女性暴行事件を起こしたとされる海兵隊員の逮捕・起訴が明らかに。不起訴にはなったが、1月にも別の海兵隊員が逮捕されていた。いずれも沖縄県警は発表せず、米軍や日本政府も情報を沖縄県に伝えなかった。
日米合意の通報手続きは空手形だ。地元だけが知らず、県民が被害に遭っていた。玉城デニー知事は「野放しの状況。遺憾の意を超えている怒り」と憤った。
隠された半年間。国は名護市辺野古の新基地建設で県の権限を代執行するという前例のない強権を使い、軟弱地盤のある大浦湾側の埋め立て着工にこぎつけた。4月の日米首脳会談、6月は沖縄県議選挙と政治日程も立て続けだった。
デモでは「隠蔽」に怒りが噴出。沖縄市の新垣邦雄さん(67歳)は「日米関係を揺るがす大問題であり岸田首相が知らないわけがない。少女を守れなかった首相として謝罪すべきだ」。別の女性は「政府は不利になることを教えない。そういう天秤に沖縄はかけられている」と声を詰まらせた。
基地司令官は謝罪せず
繰り返されてきた米軍関係者による性暴力事件。基地の整理縮小を求めるうねりが起きた1995年の少女暴行事件、その後も2001年に空軍兵が北谷町で女性を暴行、16年はうるま市で元軍属が女性を暴行殺害、遺棄した。
8年前の県民大会の共同代表で、沖縄女性史を研究する玉城愛さん(29歳)は「体が動かなくなるようだ。悔しい」と言葉を振り絞った。多発する事件に「不安を抱えながら私たちは生活に戻る。本当に平和なのか」と問いかける。
一方、「よき隣人」の米側は沖縄の切実な心情に鈍感だ。
「ご心配をおかけしていることを遺憾に思う」。嘉手納基地第18航空団司令官のニコラス・エバンス准将は県の抗議にこう述べるだけで謝罪はしなかった。
辺野古新基地の地元の一つ、名護市久志の女性(66歳)は「ご心配なんて、バカにしている。沖縄なら何してもいいと思っているの」と怒りが収まらない。
「ワジワジー(腹が立つ)して」片道約40キロを一人でデモにやってきた。米軍人にブロック片で頭を殴られて母を殺された友人、同級生の父は強盗殺人の犠牲になった。1995年の事件は当時の職場近くで起きた。「戦後80年になるのに、捨て石は捨て石なんだね」
女性は「被害に遭った子の気持ちを考えてほしい。偉い人たちは、自分の娘や孫だったら同じことができるだろうか」と訴えた。
(『週刊金曜日』2024年7月5日号)