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安保法制違憲訴訟の担い手たちが報告集会 「立憲主義・平和憲法取り戻す」

本田雅和・編集部|2024年7月26日3:06PM

 2014年7月1日から10年。その日までは国会でも何度も確認されてきたはずの「集団的自衛権」の行使は憲法上認められないとする政府解釈を、当時の安倍晋三内閣が閣議決定だけで覆し、「安保法制」関連法の法律化が始まった。そんな「戦争法」は違憲だとする訴訟が全国22カ所の裁判所に、7699人の原告、1685人の代理人弁護士によって計25件も提訴されてきた――その担い手たちが7月10日、東京・永田町の参議院議員会館で市民集会「とりもどそう立憲主義と平和憲法」を開き、会場に入りきれない350人以上が集まった。

(右から)伊東真弁護士(撮影/本田雅和)、青井未帆・学習院大学教授(撮影/豊秀一)、清水雅彦・日本体育大学教授、寺井一弘弁護士(撮影/どちらも本田雅和)。

 25件の訴訟の中には判決が確定したものや上告されて最高裁で係争中のものもあるが、これまでの判決で「違憲」を認めたものは1例もなく原告の全戦全敗とも言える。しかし、明確に合憲との判示も一つもない。基本的に原告らは非戦の憲法を武器に、平和の問題を人権問題として提訴。「立法行為違憲国賠訴訟」として法廷論戦しており、現状追認姿勢の強い今の裁判所では憲法判断も含めて「逃げられる」ことが多い――そこをどう評価して、今後を展望していくか、訴訟を支えてきた憲法学者や弁護士、ジャーナリスト、市民の代表が次々と現状と課題を報告した。誌上採録する。

【安保法制違憲訴訟全国ネット代表・伊藤真弁護士の基調報告】

 空前規模の訴訟の目標は①法令違憲による勝訴②少なくとも判決理由の中で違憲判断を獲得する③最高裁に合憲判決を出させない。最近の世論調査でも約半数の回答者が集団的自衛権の行使を評価していない。政府がどんなに日米軍事一体化を進めようとしても、他国のために戦争をすることに危機感をもつ市民は大勢いる。元最高裁判事や元内閣法制局長官らによる違憲との見解を訴訟の中で残すことができた。権力の側も一枚岩ではない。ただ、裁判官も法律家だから安保法制の明白な違憲性は当然認識できるだろうという誤認があったなど、課題も多い。

【青井未帆・学習院大学法科大学院教授のメッセージ】

 政府は安全保障政策から憲法論を切り離し、消去してきた。政府が憲法に遡っての説明をせず、国会での議論も望めない以上、私たちが言い続けるしかなく違憲訴訟は重要な受け皿。大学で接している若い人は14年以降の政府解釈を前提にした教育を受けており、安保政策が憲法論ではないのは「当たり前」と考えているのではないか。高校までの教科書は政府解釈を記述するので、自らの言動が「政治的」とみなされるのを恐れる先生も少なくない。

国家権力が憲法を破壊

【清水雅彦・日本体育大学教授】

 憲法の中心は統治規程。憲法を破壊する国家権力をいかに制限するか。日本国憲法が軍事についての国家権力を制限していることの重みを、政治家は受け止めるべきだ。違憲の自衛隊を合憲化するために、「警察以上軍隊(戦力)未満」の「実力」だから保有できる、などとした9条によるさまざまな制約は形骸化されてきた。

【桐山桂一『東京新聞』論説委員】

「何も答えぬ司法に失望」「司法は本質を直視せよ」「戦争の危険考えたのか」。安保法制訴訟を社説で取り上げてきた。憲法学者が「明白な違憲性」を意見書で述べているのに裁判所が「憲法判断を行う必要がない」と一刀両断する姿勢も許せない。この問題を司法が見逃せば憲法秩序の荒廃が起きる。「明白に違憲とはいえない」と述べた仙台高裁の判決にも「矛盾と詭弁の判決」との厳しい社説を書いた。14年7月の安倍政権下での閣議決定から、法の整合性や連続性が壊れてしまった。

【安保法制違憲訴訟全国ネット名誉代表・寺井一弘弁護士】

 何もないところから裁判するには、全国一人ひとりに立ち上がってもらうしかないと北海道から沖縄まで何度も訪ねた。皆さんが日の当たらないところで、地域の隅々で戦争をなくすために働いておられるということを学んだ。

(『週刊金曜日』2024年7月19日号)

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