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国家という怪物相手に違憲訴訟に素手で挑む(下) 婚外子差別の根絶求める富澤由子の闘い
室田 康子・ジャーナリスト。元『朝日新聞』、『朝日ジャーナル』記者|2024年8月2日8:03PM
コラム〈「差別しない権利」の確立を求めて〉富澤 由子
日本社会では、すべて人は出生時に選別される。正統か否かと。女性は出産によって、自分の子どもの選別をさせられる。子どもの「父」の存在は、国家によって決められる。戸籍法制度の施行は「一律に」と徹底され、当事者の不同意を国家は許さない。戦前の民法・戸籍法が踏襲され、母の身分、正妻か否かで子どもの身分、正統性の選別が現在に至るまで続けられている。出生届でその生涯に烙印を押されてしまうのだ。
国は女性の妊娠・出産の自己決定権を抑止し、「正当な婚姻の保護」のために差別を「差異」や「区別」と言い換え、「合理的で違憲ではない」との論理を最高裁小法廷が示した。2013年9月のことだ。司法に改めて判断を求めるため、私は提訴した。「嫡出概念」を規定する民法・戸籍法の体系は、「差別しない権利」、良心の自由の抑圧であり暴力だ。出生届での「子の選別」の母への強要は基本的人権の存立の問題である。
この現行法体系は、当事者の「本質的平等」と自己決定権による婚姻(憲法24条)=私の言う「憲法婚」=を認めず、事実婚では父が届出人になると「同居者」としない限り、出生届は受理されないなど差別を強いる現実があった。家父長制に基づく「虚構の家族」=虚偽記載の強要だ。憲法も国際条約も無視してきた内閣と立法府は、婚姻形態の選択だけでなく、個々の多様性、個人の尊厳を踏みにじってきた。戸籍は筆頭者の氏で編製され(戸籍法17条)、「非嫡出子」は母の氏を称する(民法790条2項)と定めている。
戸籍制度が保持する平等への抑圧と差別は、個人的問題、自己責任に転嫁され、「子どもがかわいそう」なのは親の責任、性道徳からの逸脱とされる。その倫理観は女性蔑視を正当化させ、性的搾取に利用されてきた。そして今なお国家は、戸籍登録と記載内容を個人を証明する唯一の公証とし、親密圏の内部に、社会規範の深部に、親族内の優劣観と身分差別を内包する「戸籍意識」として浸透させてきた。
憲法は不断の努力で自由と権利を保持することを国民に義務づけた(12条)。大臣、国会議員、裁判官、公務員たちは、憲法を尊重し擁護する義務が課されている(99条)。私は訴訟で、基本的人権の永久性(11条)のもと、内閣、立法府、司法に義務を果たすよう求める。公正な「裁判を受ける権利」(32条)の実践だ。皆さんに薦めたい。権利を蹂躙されるのに耐えるより、権利の回復を求める本人訴訟をしてみませんか、と。
(『週刊金曜日』2024年4月12日号)
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