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騙しで強制不妊手術 最高裁「違憲」判決に思う

雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員|2024年8月12日3:57PM

雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員。

「強制不妊 最高裁『違憲』」

 その報道を見た瞬間、思わず「やった!」と叫びそうになった。

 7月3日、旧優生保護法をめぐる5件の訴訟の上告審で、最高裁の判決が出たのだ。旧法を「立法時点で違憲だった」とし、国に賠償を命じる判決を言い渡し、原告が勝訴。

 1948年から96年まで存在した旧優生保護法のもと、障害者らが不妊手術を受けさせられていたことを知っている人は多いだろう。その数、実に約2万5000人(厚生労働省)。多くの人が取り返しのつかない手術に苦しんできたわけだが、国は「当時は合法だった」という姿勢。被害者が国を訴え始めたのが2018年。多くが被害から半世紀以上経っての提訴だった。以降、全国で39人が原告となって裁判を闘ってきた。提訴からすでに6人が亡くなったという。

「元の身体に戻してほしい」「私の人生を返してほしい」

 原告の方々の悲痛な声には、22年10月、東京・日比谷野音で開催された「優生保護法問題の全面解決をめざす10・25全国集会」と、今年3月に衆議院第一議員会館で開催された「最高裁判決を待つまでもない! 優生保護法問題の政治的早期・全面解決を求める3・21院内集会」で触れてきた。

 16歳の時、何の説明もなく不妊手術をされた女性は結婚後、そのことを夫に打ち明けた途端、夫に去られたと涙をこらえながら語った。

 ほかにも「脱腸・盲腸の手術」と嘘をつかれ手術された人もいれば、市役所の職員から「障害年金を受給するためには手術を受けるしかない」など虚偽の説明をされた人もいた。

 なぜ、そんなことが……と憤っていたものの、最高裁判決後の報道で、これらのことが旧厚生省によって「お墨付き」を得ていたのだと初めて知った(『朝日新聞』24年7月4日付)。

「身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔等の手段を用いることも許される場合がある」

「欺罔」とは「詐欺的行為で、相手に虚偽のことを信じさせ、錯誤させること」。旧厚生省は、身体拘束のみならず、騙しも許されると通知していたのだという。

 最高裁での勝訴は嬉しい。だが、手術された人たちの人生は返ってこないし身体は元どおりにはならない。国はこの重みを、しっかりと受け止めてほしいと思っている。

(『週刊金曜日』2024年7月26日号)

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